今回の主題は「会議の進め方」ではなく「会議の生産性をあげる」、である。ここでいう、生産性をあげるとは、平たんな言葉でいえば、成果をあげるということだ。
今回のテーマは、成果をあげる人の第7の習慣「会議の生産性をあげる」だ。「アジェンダをつくり、司会を設けて、議事録をつくろう」それを主題にしたら、新人研修向けの内容になってしまう。今このページを読んでいるあなたは、既にそんなことは知っている、という前提でお話する。主題は「会議の進め方」ではなく「会議の生産性をあげる」、である。ここでいう、生産性をあげるとは、平たんな言葉でいえば、成果をあげるということだ。会議についてドラッカーはこう言っている。
会議には、成果をあげるものと成果をあげないものの2つに1つしかないことを知らなければならない。
ピーター・ドラッカー
私がある企業に、経営チームをつくるコンサルティングをした時のことだ。経営チームに今行っている全ての会議をリストアップしてもらった。あまりにも多くの種類の会議があって驚いた。
それが次だ。取締役会議、経営会議、欧州生産会議、欧州販促会議、アジア生産会議、アジア販促会議、投資会議、部門長会議、営業会議、生産販売会議、開発会議、プロジェクト推進会議、予算審議会議、予算進捗会議、情報セキュリティ会議、安全衛生会議。各分野の責任者が主導して会議を進め、経営チームのメンバーはその会議に参加する形だ。
次に、会議にどれくらいの時間がとられているかを聞いた。経営チームのメンバーほとんどが、月曜日から木曜日にかけてほぼ会議でスケジュールは埋まると言っていた。経営チームの仕事は「意思決定を通じて組織で成果をあげること」だ。会議は多くなって当然だ。
意思決定するために、情報を共有し、意思の疎通を行う。そして、議論を交わし、最善の答えをつくり出さなければならない。問題は会議が多いことではなく、会議で成果をあげているかどうかだ。経営チームのメンバーは全員、どの会議が成果をあげていて、どの会議が成果をあげていないか分からないと言っていた。
会議はやがて形骸化し、意味を見失う。それは、開催することそのものが目的になっていくからだ。こうして、成果をあげているか、あげていないか分からなくなる。会議の生産性をあげるには何が必要なのだろうか。
ドラッカーはこう言っている。
会議の生産性をあげるにはかなりの自制を必要とする。会議の目的を決めそれを守らなければならない。目的を達成したときには直ちに閉会する。別の問題をもち出してはならない。会議の生産性をあげるにはフォローが必要である。
ピーター・ドラッカー
ここでいうフォローとは、「部下の仕事を補い助ける」ということだ。会議の生産性をあげるためのフォローについて、ドラッカーは事例を次のように紹介している。
「この点に関しては私の知っている最高の経営者アルフレッド・スローンが名人級だった。1920年代から50年代までGMを率いたスローンは、週6日のほとんどを会議にとられていた。3日は委員会の類、3日は打ち合せのたぐいだった。委員会では冒頭必ず会議の目的を明らかにした。あとは耳を傾けた。メモはとらず、分からないことを聞く以外は発言もしなかった。最後にまとめとあいさつを述べて席を立った。
しかし部屋に戻って直ちにメモを書き、そのコピーを出席者全員に届けさせた。メモは結論と宿題を明らかにした」
上司の仕事は、「部下を動かすために命令をすること」ではなく、「命令しなくても部下が動けるようにすること」である。命令を下すことではなく、合意の形成者となることだ。会議の生産性をさげる最大の原因は、社長の圧制と取締役の沈黙である。社長の一方的な命令は部下の思考をまひさせる。しかし、共通目的に立った議論は部下のエネルギーを解放する。部下は、上司の強い命令に従わされて無難なことをするか、上司の善き意思に導かれて偉大はことをするかのどちらかだ。
そもそも、上司は会議をする前から会議と遠いところに頭がある。上司は、会議で話し合いをする前から自分の結論をもっているからだ。一度、頭の主(ぬし)となった考えは変えづらい。実際、自分の考えと違う考えが部下から出てきた場合、上司は「そうではない、よく聞け」と言わんばかりに部下に説得をはじめる。話し合いは一瞬にして上司の独演会となる。会議の生産性をあげるために、上司はどう振る舞うべきかを考えたい。
ドラッカーはこう言っている。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授