「疑う」からはじめる。激変の時代を生き抜く思考・行動の源泉ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

リモートワークの定着化など、働き方が大きく変化するなか、管理職の在り方もこれまで通りとはいかなくなっている。転換の時代に通用するマネジメントの本質とは。

» 2021年06月17日 07時02分 公開
[澤 円ITmedia]

 この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


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 リモートワークの定着化など、働き方が大きく変化するなか、管理職の在り方もこれまで通りとはいかなくなっている。転換の時代に通用するマネジメントの本質を、元日本マイクロソフト業務執行役員であり、「プレゼンの神」と呼ばれる澤円氏に聞いた。

そもそも「管理職」というキーワードは適切なのか

『「疑う」からはじめる。 これからの時代を生き抜く思考・行動の源泉』

 新型コロナウイルスが出現し、社会も個人も急激な変化を強いられました。僕たちのもとに、突然、「当たり前」の呪縛から解き放たれるタイミングが訪れたのです。だからこそ、「いま、ここから、はじめよう」という気持ちを込めて発刊したのが、本書『「疑う」からはじめる。』(アスコム刊)です。

 もちろん「管理職」と呼ばれる仕事をしている人も、既存の価値観をリセットし、新たな管理職の理想像を模索していかなければなりません。しかし、コロナ禍が起きなかったとしても、いわゆる管理職の仕事のやり方には以前から多くの問題点が潜んでいたのではないでしょうか。

 まず前提として確認しておきたいのは、日本はマネジメント後進国だという事実です。マネジメントの概念がとても悪いかたちで根づいてしまっているようです。

 管理はマネジメントのことではないし、管理職もマネジャーのことではありません。マネジメントにはもっと広く奥深い意味が含まれていて、じつは「最適な日本語訳がないのでは?」と思うほどです。

マネジャーのもっとも基本的なタスクは「判断すること」

 確かにマネジャーには管理の側面もありますが、それはあくまでタスクの一つにすぎません。

 マネジメントの仕事では「判断をくだす」ことが最重要事項なのです。マーケットを俯瞰して、自社のリソースを最適に配置する判断などがこれにあたります。リソースの最適配置において、多分野の知識をもって、より広い観点から判断することがマネジャーの仕事です。マネジメントとは、いうなればビジネスにおける「羅針盤」なのです。

なぜ部下のモチベーションが上がらないのか

 リソースを最適に配置するためには、チームメンバー一人一人の能力や適性を見極める必要が出てきます。だから、マネジャーには、高度なヒアリング能力が問われることになるのですが……。

 「もっとやる気を出せ!」

 「モチベーションを上げていこう!」

 みなさんのまわりには、こんなことばかり繰り返してハッパをかけているつもりの上司はいませんか。きつい言い方になりますが、これではマネジャー業失格です。モチベーションというのは、他人に言われて上がるものではないからです。

 上から命令されたからといって、部下のモチベーションは上がりません。マネジャーの立場にいる人間は、この事実をまず理解したほうがいいでしょう。たとえ結果的に上がったように見えたとしても、「人のやる気というのは、他人によっては変わらない」ことを大前提に考えたほうがいいと僕は思います。

上司自身が職場内ブロッカーになっているケースも

 残念ながら、チームのパフォーマンスを高めていくうえで、マネジャー自身がブロッカーになっているケースもあります。典型的なのは、部下に向かって「数字を上げろ」「書類をつくれ」と、ひたすら命令や指示を飛ばすだけというタイプです。

 でも、人に対して命令する権利などマネジャーにはありません。

 マネジャーがやらなければならないのは、部下のモチベーションを強引に上げようとすることではなく、モチベーションが上がる環境を整えること。チームの力を阻害するブロッカーを外していき、みんながのびのびと仕事ができる環境を整えることこそが、マネジャーの重要な仕事です。

日本の管理職は「名誉職」にすぎない

 デキるマネジャーは、結果的に指示や命令をしているように見えても、それはあくまでリソースを最適に配置したうえで、いわば「開始ボタンを押しているだけ」です。

 マネジャーに人を自由に動かす権利までは与えられていません。リソースのなかに「人」が含まれているだけで、人の心も含めて自由に動かす権利なんて、そもそも誰にもないのです。

 なのになぜ、勘違いしてしまったマネジャーがたくさん存在するのでしょうか。それは、とくに日本企業ではマネジャー(管理職)は「名誉職」だからです。

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