第2回 学び直しを楽しむ極意人生100年時代を切り拓く! ミドルのための「学び」戦略(2/2 ページ)

» 2022年01月17日 07時09分 公開
[前川孝雄ITmedia]
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1、真面目なる生涯

2、思想

3、事業

4、金

 この順番はそのまま内村鑑三が考えるプライオリティを示しています。

 本当に大事なのは「いかに生きるか」。ビジネスで大もうけすることよりも、その姿を周囲にいる多くの人が見ているのです。そして、その真摯な生き様が人々に影響を与え、その生き様を永く語り継いでいくことにもなる。それこそが後世の人をも動かす「最大遺物」だと言っているのです。

 自分がこれからの人生でどのように生きていきたいのか、周囲の人にどのような生き様を遺したいのか、それを念頭に置いて自己分析に取り組んだとき、きっと本当の自分が見えてくるはずです。

インプットだけでなくアウトプットが重要なこと

 自己分析で「学び方針」が定まったら、いよいよ学びのスタートです。自分の関心に沿った主体的な学びは、本来楽しいものです。学びによって未知の自分を知り、本当にやりたいことを見つけ、人生が変わることも珍しくありません。

 まずはお試しでよいので、「学び方針」を意識しながらも、自分が少しでも興味をひかれることから学び始めましょう。

 このトライアルの学びでは、せっかく学び始めたのだから、面白くなくても続けようという発想は禁物です。人間には、一度所有したものを高く評価し、手放したくないと感じる保有効果という心理現象があります。しかし、保有効果にとらわれないことです。自分に合わないと感じたら、無理して続けず、次に移行していきましょう。大事なのは、自分の中でどのような化学反応が起きるかを見つけること。注意深く、自分の心の声に耳を澄ませることです。

 トライアルで手応えを得たら、その分野に関してより深い学びに進んでいきましょう。その際のキーワードは、「深い体験」と「アウトプット」です。

 一般に学習というと、テキストを読んだり、テスト範囲を暗記したりするなど知識のインプットをイメージしがちです。学生時代に、暗記帳を使って必死にたくさんの英単語を覚えた記憶は誰にもあるでしょう。機械的な暗記作業は苦痛である上に、内容を忘れるのも早いもの。受験前に大量に覚えた英単語や歴史の年号は、試験が終わればどんどん頭から抜けていきます。インプットだけの学習では真に役立つ知識やスキルは身につきにくいのです。

 インプット学習だけでしっかり身につきにくいなら、何が必要か。それはズバリ、アウトプット学習です。

 決してインプットに意味がないわけではありません。英会話のためには英単語を覚えるインプット学習は必須。しかし上達にはアウトプット学習の組み合わせが不可欠で、それには実際に英会話をするのがいちばんです。会話で日常的に使う単語は、簡単には忘れません。また、実際に会話で使うことで、その単語が持つ多様なニュアンスも自然と身につきます。

 従って、アウトプットは継続して何度もくり返し行うことが大切です。次第にインプットした英単語が自分のものになり、会話ができるようにもなるのです。よく言われるように、英会話を身につけるには、参考書で学ぶより外国人の友達や恋人を作るのが早いのです。インプットをしたら、アウトプットをして試行錯誤を重ねる。その「深い体験」を経ることで自分に足りないものが見えてきて、テキスト学習だけでは得られない細かな気付きも得られます。

 この実践的なアウトプット学習による体験は、インプット学習よりはるかに手応えがあり、面白いことも実感するでしょう。この学びの醍醐味(だいごみ)を知ることで、学習はさらに深まっていくのです。

※本稿は前川孝雄著『50歳からの人生が変わる 痛快!「学び」戦略』(PHP研究所、2021年11月)より一部抜粋・編集したものです。いかにして一生もののワクワクする本当の学びに出会うか。――そのヒントを得たい方は、ぜひ同書をご参照ください。


著者プロフィール:前川孝雄(FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師)

人材育成の専門家集団FeelWorksグループ創業者であり、人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。兵庫県明石市生まれ。大阪府立大学、早稲田大学ビジネススクール卒業。リクルートで「リクナビ」「ケイコとマナブ」「就職ジャーナル」などの編集長を経て2008年に「人を大切に育て活かす社会づくりへの貢献」を志に起業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、400社以上を支援している。独自開発した「上司力研修」「50代からの働き方研修」、eラーニング「パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などを提供。多様な働く人たちの本音に通じ、四半世紀にわたる現場研究に基づいた研修プログラムで、現場を預かるリーダー達から圧倒的支持を集めている。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年に働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人企業研究会 研究協力委員サポーター、一般社団法人ウーマンエンパワー協会理事なども兼職。連載やコメンテーター、講演活動も多数。著書は『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『上司の9割は部下の成長に無関心』(PHP研究所)、『年上の部下とうまくつきあう9つのルール』(ダイヤモンド社)、『もう、転職はさせない!一生働きたい職場のつくり方』(実業之日本社)、『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『本物の「上司力」』(大和出版)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks)など多数。最新刊は『50歳からの人生が変わる 痛快!「学び」戦略』(PHP研究所、2021年11月


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