「100年に1度の大変革期」を迎えた自動車業界において、「小売業としての進化」、および「小売業からの進化」に取り組んでいるABDiでは、守りのIT、攻めのITだけではなく、「攻めるIT」によりモビリティ社会を支え続けるインフラの実現を目指している。
アイティメディアが主催するライブ配信セミナー『Enterprise IT Summit 2025 春 デジタル施策を「組織の力」に変える技術』の基調講演に、オートバックスセブン IT管掌で、オートバックスデジタルイニシアチブ(ABDi)代表取締役社長である則末修男氏が登場。『オートバックスセブングループの「守りのIT、攻めのIT、攻めるIT」』をテーマに、「100年に1度の大変革期」を迎えている自動車業界における一般的なIT部門や機能子会社とは異なるABDiのユニークな取り組みについて紹介した。
1947年2月に創業したオートバックスセブングループは、売上高が約2500億円、営業利益は約120億円規模(連結/2025年3月期)の企業。1974年11月に、日本初のカー用品のワンストップショップ「オートバックス」の第1号店を大阪府大東市に出店し、2024年に50周年を迎えた。現在、オートバックスセブングループでは、カー用品の販売だけでなく、中古車販売など、さまざまなストアブランドを展開。店舗経営だけでなく、ディーラー事業、B2B事業、EC事業、海外事業などにも取り組んでいる。
則末氏は、「クルマのこと、自動車産業に対し、川上から川下までの事業を展開している企業グループです。日本はもちろん、中国、フランス、マレーシア、シンガポール、アセアン諸国など、さまざまな地域で小売業や輸出業を展開しています。『社会の交通の安全とお客様の豊かな人生の実現』というパーパスに基づき、交通事故をなくすこと、出かけた先での不便や不自由をなくすことにより、お客様が豊かな人生を送ることができる世界を目指しています」と話す。
オートバックスセブンでは2023年5月に、長期ビジョン「Beyond AUTOBACS Vision 2032」を策定し、環境変化に適用し、事業領域の拡大と新たな事業の創造に挑戦し続けることで、2032年度に連結売上5000億円企業を目指している。則末氏は、「現在、約2500億円規模なので、その倍以上の成長を2032年に向けて進めています。もちろんこれまでの連続的な成長のビジネスも大事にしながら、非連続のイノベーションも生み出し、合わせて5000億円の売上を目指しています」と話す。
ABDiは2002年6月にオートバックスの情報システム部門が独立し、バックスウイングシステムとして設立。2009年10月に富士通が資本参加することで、ABシステムソリューションに社名を変更。2023年3月末に富士通との提携を解消し、オートバックスセブンの100%子会社として現在の社名に変更した。ABDiの最大の特徴は、オートバックスセブンのIT・DX戦略担当者が転籍し、IT・DX推進を担う事業子会社として一枚岩の運営が可能なことで、オートバックスセブンにはIT・DX推進部門は設置されていない。
則末氏は、「オートバックスセブングループのIT・DXを推進するメンバーは、全てABDiの社員で、企画から開発、運営、社員教育までトータルで担っています。また代表取締役会長にオートバックスセブンの代表締役社長の堀井勇吾が就任していて、これにより経営とITが一体化していることがABDiの最大の価値といえます。またABDiのロゴにオートバックスのロゴが使われていることも特徴の1つで、現場に寄り添ったIT・DXを推進する会社であるということを表しています」と話している。
オートバックスセブングループは、2032年に売上高5000億円を目指しているが、IT活用で利用できる予算には限りがある。現在、売上高の1.5%程度をIT投資の上限としているが、IT活用によりリスクやコストを低減する「守りのIT」と、IT活用により競争力や収益性を向上する「攻めのIT」に適正に分配することが必要になる。
則末氏は、「オートバックスセブンに入社した2018年には、守りのITの予算が80.9%で、攻めのITが19.1%と守りに注力した予算でした。長期ビジョンを達成するためには、攻めのITによる競争力や収益性の向上に注力することが必要であり、いかに守りのITを効率的に進めるかが大きなポイントになります。そこでまずはコストの見直しによるコストコントロールを行いました」と話す。
コスト見直しは、以下の7つのポイントで実施している。
1、内製化(スクラッチ開発、 ServiceNow、Tableau、運用監視)
2、委託契約の見直し(一括請負契約から準委任契約へ。責任はABDiが担う)
3、モダナイゼーションによる保守性向上(COBOLからJavaへ)
4、各種ライセンスの見直し
5、第三者保守サポートサービスへの切替え(リミニストリートへの切り替え)
6、ネットワーク(Bフレッツ)契約の見直し
7、ABDiの100%子会社化
「7つのコストの見直しを徹底的に行った結果、2018年から2022年にかけての守りのITと攻めのITのバランスが大きく変化しています。まず2018年には守りのITが80.9%で攻めのITが19.1%でしたが、2022年には守りが72%で攻めが28%になり、2024年には守りが68.5%で攻めが31.5%と、かなり攻めのITに貢献できています。これで満足するのではなく、2032年長期ビジョン実現するために、守りのITと攻めのITの割合を40%と60%にすることを目指しています」(則末氏)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授