メーカー間を超えての協調作業が実現すれば、工事の省人化や効率化が一段と向上する可能性も浮上。国土交通省はこうした技術を利用し、人手不足に対応。老朽化した道路の更新事業などへの応用にも期待がかかる。
高齢化や人口減少による建設業界の人手不足が深刻化する中、ICT(情報通信技術)やDX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した自動工事の実用化に向けた動きが急ピッチで進んでいる。メーカー間を超えての協調作業が実現すれば、工事の省人化や効率化が一段と向上する可能性も浮上。国土交通省はこうした技術を利用し、人手不足に対応。老朽化した道路の更新事業などへの応用にも期待がかかる。
筑波大や土木研究所、九州大などが8月下旬、茨城県つくば市で公開した自動建設機械による工事の実証実験。工事現場を模したフィールドで、無人の油圧ショベルが土を掘り、同じく無人の運搬車両に積み込んでいた。掘る位置は、レーザーを使った測距儀で得られたデータなどを基に変化し、車両同士が共通の制御信号に従って「あうんの呼吸」ですれ違ったり、所定の位置に移動したりしていた。
システムの最大の特徴は、異なるメーカーの建設機械を共通のフォーマットと制御信号で協調できるようになったこと。個々のメーカーには独自のノウハウがあり、複数社が混在しての共同作業はこれまで困難だったが、競争部分と協調領域を切り分けることで可能となった。
「これにより自動施工への参入がより容易になるとともに、導入の柔軟性や拡張性も大きく向上することが期待できる」。開発にあたった筑波大システム情報系情報工学域の永谷圭司教授は説明する。
こうした技術の開発が急がれる背景には、建設業界を巡る深刻な人手不足がある。
国交省の統計によると、建設業の就業者数は令和5年時点で483万人で、ピークの平成9年の685万人から約30%減少。年齢構成をみると55歳以上が全体の3割を占める一方、29歳以下は1割にとどまる。60歳以上の大半は10年後に引退することが見込まれることから、担い手確保とともに現場へのICTやDXの導入による省人化や効率化が急務となっている。同省ではさまざまな取り組みによって、令和22年度までに作業人員を3割減らし、生産性を1.5倍に高めることを目指している。
社会実装を目的とした今回の実証実験は、9年度にプロジェクトが終了となる予定。永谷教授は「終了までに実際の現場で運用し、12年度ごろには実社会で動き出せれば」と見通しを述べた。(秋山紀浩)
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