パーソルグループのAI活用が現在地に至るまでのキーワードは、アジャイル、セキュリティ・ガバナンス、共創・コミュニティ文化の3つ。アジャイルとセキュリティ・ガバナンスでは、2023年4月の生成AIの登場に合わせ、すぐに導入準備を開始したが、顧客のデータを守ること、倫理に反しないことを絶対条件にした。
まずは法務部門と一緒にAIの利用に関するルールをガードレールとして準備した。また、安全に使える環境は、エンジニア部門の協力によりプロトタイプを構築し、経営層にAI利活用を進めることを報告、ガイドラインを公開してアジャイル・ガバナンスの取り組みをスタートした。
アジャイル・ガバナンスの実践では、一般社員が参照する汎用的なガイドラインはスピードを重視し、2023年4月に「AIサービス利用におけるセキュリティガイドライン」を公開。その後、世の中の変化に応じて新しいルールを定期的に取り入れ、共有するPDCAサイクルを回している。2025年7月には、AIを積極的に活用するためのAIガバナンスを検討した「AI基本方針」を日本語、英語で同時に公開した。
アジャイルと共創・コミュニティ文化によるプロダクト開発では、プロダクトオーナーのもと、研修コンテンツ・イベント企画運営、アプリケーション開発、インフラ構築の推進メンバーが活動。具体的な活動としては、CHASSUの学習MAP策定や研修・イベントの開催など。コミュニティから「こんな機能が欲しい」といったフィードバックがあれば、定期的にCHASSUの開発に生かしている。
朝比奈氏は、「コミュニティ文化では、楽しく主体的に学ぶコミュニティを目指しています。現在、Microsoft TeamsやMicrosoft SharePoint を使ったアナウンスやイベントなども、すべて推進メンバーで実施しています。2025年は、『生成AIで業務改革』、および『AIエージェントで未来創造』の大きく2つのテーマが注目されており、それぞれに学習MAPを作り、啓発活動を実践しています」と話す。
生成AIで業務改革を進めたい人向けの学習MAPでは、AIを初めて学ぶ人でも、定番の学習コンテンツや研修により新しいはたらき方を生み出すための方法を学ぶことが可能。一方、AIエージェントで未来創造を進めたい人向けの学習MAPでは、CHASSUの基本概念や操作を習得することで、新しい価値を創造する方法を学ぶことができる。これにより、半年後、1年後に業務改善マスター、AIエージェントマスターを育成することを目指している。
またイベントは2週間に1回程度開催し、可能な限りアーカイブ動画を共有、プレイリストで振り返ることができるようになっている。これまでのイベントは、啓発活動を主な目的としていたが、現在は新しい技術を楽しく体得し、学び合う組織を目的に参加型のコミュニティにしたことで、全職種が参加し学びの習慣化が見られるという。
「共創・コミュニティ文化では、経済産業省が公開している『生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方』に基づき、生成AI活用人材に求められる土台(マインド・スタンス)が重要と考え、モラル/コンプライアンス/セキュリティ、新しい技術を主体的に学び続ける姿勢、問いを立てる力/仮説検証力といったスキルが必要になると考えました。パーソル総研のリサーチでは、学び合う組織として必要なのは“学びに向かう文化”であり、これを1人で実現するのではなくコミュニティ・ラーニングにより支えていくことが必要になると報告されています」(朝比奈氏)。
生成AIのような新しい技術を導入する場合、まずは経営向けに社内外の有益な情報をインプットし、理解を得る。次に新しい技術に興味を持ち、リスクを恐れず挑戦する「ファーストペンギン」を見つけてエンパワーする。これにより成功事例を創出、共有して現場を盛り上げることで心理的安全性を保つ。また管理職を研修などでフォローして、こちらの心理的安全性も担保することが重要である。
朝比奈氏は、「現場の社員において生成AIは、オフィスツールを導入するのと同義になるぐらい普通に使いこなすことが求められます。経営の観点でも、必要なスキル、不可欠なツールなのですが、安くはないコストがかかることを理解しておくことも重要です。今後、皆さまとも情報交換をしながら、AI活用を推進することで、日本全体を盛り上げていく活動の一端になればと考えています」と話している。
パーソルグループの生成AI活用は、グループのテクノロジーチームが運営しているオウンドメディア「TECH DOOR(https://techdoor.persol-group.co.jp/contents/4821/)」で紹介されている。興味があれば、参照してほしい。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授