ここからは、首都圏の大手企業から地方オーナー企業へ転職した実際の事例をご紹介します。
一つ目は、電子部品メーカーがエグゼクティブを迎えたことで、新たな業界への進出を果たした事例です。
北陸地方のとある電子部品メーカーは、特定の業界への売り上げ依存度が高いという課題を抱えていました。しかし、社内には新しい業界を開拓するネットワークがありませんでした。
そこで迎え入れたのが、自動車関連業界で豊富な経験を持つエグゼクティブ人材、Aさんです。独自のネットワークや営業ノウハウを生かし、新規市場を開拓した結果、現在では売り上げの半分近くを自動車関連が占めるまでに成長しました。
二つ目の事例は、大手コンサルティング企業から地方化学メーカーへ転職したBさんです。
Bさんはもともと、この化学メーカーの担当コンサルタントでした。外部人材として組織変革に携わる中で、かねてより「この会社にはもっと大きな可能性がある」と感じており、経営者のビジョンや社風に惚れ込んで、自身の経験をさらに活かせるフィールドとして転職を決断しました。
現在は人事評価制度の刷新や経営企画業務に携わるBさん。組織風土の変革によって社員のモチベーションが向上し、若手がリーダーに立候補する例も増えています。Bさんは首都圏と地方の2拠点で生活し、出社と在宅勤務を使い分ける働き方をしています。
三つ目は、電気系商社で役員を務めたCさんが、地方の総合商社へ転職した事例です。
Cさんは家庭の事情により、首都圏から地方へ移り住むことを決めました。前職では複数の部門でマネジメントを経験し、人事を含む組織運営のノウハウを豊富に持っており、地方移住後の働き方を模索する中で総合商社に出会います。
子会社の代表に抜擢されたCさんは、社員と行動を共にしてコミュニケーションをとり、積極的に現場へ足を運びながら組織改革に乗り出しました。その結果、社員の士気が上がり、顧客へさらに高い価値を提供できる会社へと成長させました。
これらはいずれも、首都圏のエグゼクティブが年収1000万円以上で地方転職を果たした事例です。
エグゼクティブの転職では、「会社へどのような恩恵をもたらすのか」が採用基準となります。経営課題に対して十分アプローチできる人材であれば、条件や待遇面に柔軟性が生まれる場合も多く、2拠点生活やリモート勤務が認められることもあります。
また、エグゼクティブ側から見ると「これまでのキャリアすべてを懸けてでも挑戦したいと思えるか」が判断基準となっているようです。自らのスキルをフルに発揮し、さらなる手応えややりがいを得るステージとして、地方企業を選ぶエグゼクティブが増えています。
地方オーナー企業で活躍し、成果を出し続けているエグゼクティブ人材には、いくつかの共通点があります。
一つは、過去を否定しないことです。
「今までのやり方が間違っていた」と切り捨てるのではなく、「その時代ごとに所属している社員が全力でやってきた結果が今である」と受け止める姿勢が重要です。
もう一つは、自身の過去の栄光を語らないことです。
首都圏でどれだけ華々しい経歴を持っていたとしても、地方企業では一からのスタートです。現場に入り込んで対話し、少しずつ実績を積み重ねてこそ信頼を得られると知っておく必要があります。
そして最後に、何より重要なのが人柄です。
エグゼクティブは、自分一人で成果を出す仕事ではありません。社員を動かしながら組織を変える役割だからこそ、「この人と一緒に働きたい」と慕われる存在であることが求められます。そのためには、親しみやすさや柔軟な思考、調和を重んじる姿勢が大切です。
エグゼクティブに求められるのは、単なるマネジメントではなく、経営課題の解決です。もちろん、地方オーナー企業での変革は簡単ではない局面もあります。その一方で、自らの経験・知見の発揮が組織の未来づくりに直結し、大きな手応えを得られる環境でもあるのです。
地方には、全国的な知名度は高くなくとも、独自の技術や強みを持つ「キラリと光る企業」が数多く存在します。そうした企業の可能性に、自分のキャリアを懸けてみたいと思えるか――そこに、地方転職の本質的な価値があるのではないでしょうか。
1978年生まれ、千葉大学卒。
プロバスケットボール選手から、リクルートでのセカンドキャリアを経て、2010年に地方特化型の人材紹介会社エンリージョンを設立。UIターン転職に特化した全国最大級の人材紹介ネットワーク「リージョナルスタイル」に加盟し、新潟・群馬・長野・山梨・富山・石川・福井・滋賀の8県9拠点で事業を展開。
経営層・部長職以上に特化したエグゼクティブサーチを強みとし、地域企業の経営課題に対して「人材」という観点から意思決定を支援。経営者と向き合いながら、組織づくり・事業成長に直結する採用支援を行っている。
現在は経営者であると同時にキャリアコンサルタントとしても活動し、転職支援およびキャリアデザインサービスを提供。現場と経営の両視点から、これからの働き方と人材戦略のあり方を提言している。
著書に『30代から地元で暮らす 幸せのUターン転職』(幻冬舎)、『マンガでわかる 仕事と子育ての両立の壁にぶち当たった30代共働き夫婦が「キャリアデザイン」に本気で取り組んだら……』(ディスカヴァー21)がある。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授