未曾有の金融・経済危機、今こそITの出番「2009 逆風に立ち向かう企業」三菱東京UFJ銀行(1/2 ページ)

大規模なシステム統合プロジェクトを完遂したメガバンクの雄、三菱東京UFJ銀行は、百年に一度という金融危機の中、生き残りを賭けて、さらなる経営改革に取り組む。根本常務執行役員情報システム部長は「ITの出番は多い」と話す。

» 2009年01月05日 00時00分 公開
[聞き手:浅井英二,ITmedia]
根本武彦常務執行役員情報システム部長

日本のメガバンクも世界同時金融危機の荒波に揉まれ、生き残りを賭けた経営改革を迫られている。三菱東京UFJ銀行で情報システム部門を統括する根本武彦常務執行役員は、「危機に直面した企業は、経営体質をさらに筋肉質に変え、選択と集中で次に備えることが求められている。ITの出番は多い」とし、情報システム部門が改革に貢献すべきだと話す。

ITmedia サブプライムローンの破たんをきっかけにした金融危機が深刻さを増しており、底が見えない中、旧東京三菱銀行と旧UFJ銀行のシステム統合を無事終えました。コスト削減はもちろん、顧客サービスの向上に貢献しそうですね。

根本 今回の金融危機は、世界同時かつ非常に短期間で襲ってきたもので、まさに「百年に一度」の危機です。生き残りを賭けてしっかりと足元を固め、同時に次への布石も打つことが経営戦略に求められます。一方、ITも「クラウドコンピューティング」のような新しい技術が登場してきており、構造改革を迫られています。経営とITのどちらにも変革が求められており、ならば情報システム部門が旗振り役となり、貢献すべきだと考えます。

ITmedia 経営戦略の要点は何でしょうか?

根本 より筋肉質に経営を変えていくことであり、その上で「選択と集中」を実践することです。

 当行ではこれまでにも「チャネル」「プロセス」「ビジネス」、および「システム」という4つの改革を進めてきており、情報システム部門も貢献してきました。このような時期だからこそ、さらに改革を図り、損益分岐点を下げ、投資回収の早期化を図るべく、即効性のある分野に資源を優先配分し、より筋肉質な体質へ進化する必要があります。こうした観点では既存のIT資産を最大限に活用してシステム化を実現できるか否かが、ますます重要となってくるでしょう。

 自らの「強み」「弱み」「機会」、および「脅威」という、いわゆるSWOTを分析し、選択と集中を判断したり、実践するのにも情報システム部門は大いに貢献すべきでしょう。例えば、IT資産ごとのコスト構造の可視化、IT投資後の利益回収状況をモニタリングするベネフィットトラッキングなどを通じ、不採算な分野からの撤退を提言していくことが、これまで以上に求められます。また、景気低迷期には、一般的に言って買収や提携などを状況に応じて使い分ける合従連衡の戦略が求められます。単に「自社」の資産だけで戦うのではなく、「グループ」として相乗効果を狙うほか、流通や鉄道といった「異業種」との提携や「同業者」との補完、連携によってコストを下げながら、新たな手を打つ必要があります。

 社会全体の有効資産を活用することが、この時期ほど必要なのです。ITはそれを支え、実現に導くために大きな役割を担っています。

「総知産業」への変革、金融も積極貢献

ITmedia 具体的にはどのような手が考えられるのでしょうか?

根本 今後の計画についてわたしの口からお話しできませんが、これまでの実績であればご紹介できます。

 例えば、KDDIとの提携を通じてスタートした「じぶん銀行」の設立です。携帯技術を融合した、じぶん銀行は、auの携帯電話が通帳になり、携帯電話番号で振り込みもできる新しい銀行です。携帯電話からのネットバンキングがさらに進化し、携帯電話そのものが銀行になったのです。auショップが新規受付の窓口となるため、あっと言う間にチャネルが増え、若いお客様の開拓にもつながりました。

 今後は、利用者が「この銀行と取引をする」と意識をせず、一般的な消費行動の裏で自然に取引する「クラウドバンキング」とでも表現されるような時代になるのではないでしょうか。そうした時代においてもわれわれは訴求力を高めなければなりません。消費者のさまざまな場面にしっかりと入っていくには、ITが欠かせません。世の中はまだ、インフラを持つ「装置産業」が主役ですが、やがて社会の知的資産を総合化して価値を高める「総知産業」の時代がやってきます。この変革では金融も積極的に貢献していきたいと思っています。

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