ニュース
» 2010年03月15日 08時33分 UPDATE

ITmedia エグゼクティブセミナーリポート:パラダイムシフトを乗り越えるために、新たな資本主義を確立する気概を持て!―― 一橋大・米倉教授 (1/2)

一橋大学教授の米倉誠一郎氏によると、今回の不況はパラダイムシフトによってもたらされたものであり、この状況を克服するためには従来の発想とはまったく異なる経済発展の道を見つけ出すことが不可欠なのだという。

[岡崎勝己,ITmedia]

日本経済が新たな成長軌道を描くための条件

一橋大学イノベーション研究センター教授の米倉誠一郎氏 一橋大学イノベーション研究センター教授の米倉誠一郎氏

 2009年10〜12月期における日本企業の経常利益は、前年同期比102.2%増の10兆3763億円となり10四半期(2年半)ぶりの増益に転じた。ただし、日本経済の先行きは依然として不透明なままだ。事実、全産業の売上高は同3.1%減の335兆1782億円と、8四半期連続で減収を続けている。自動車や電化製品など、日本を代表する産業においても、本業だけで十分な利益を確保できている企業は皆無に等しい。

 アイティメディアは3月4日、企業経営層向けのセミナー「第10回 ITmedia エグゼクティブフォーラム」を開催した。基調講演に登壇した一橋大学イノベーション研究センター教授の米倉誠一郎氏は冒頭で「今回の不況は単なる景気循環によるものではなく、パラダイムシフトの結果であることを理解する必要がある」と強調。内燃機関によるピストン運動よりもエネルギー効率の高い電気自動車の実用化や、中国経済の台頭をその例に挙げ、「こうした中にあって日本経済が成長を続け、世界第一位の質的な経済大国を目指すためには、新たな資本主義を作り上げるという気概を持つことが重要なのだ」と、変化に対応するための大胆な改革の必要性を訴えた。

戦後の経済復興に見る発想転換のためのヒント

 日本経済は戦後、奇跡とも呼ばれる復興を果たした。その歴史に学ぶべきことは今でも決して少なくないと米倉氏は説く。

「日本の復興にあたっては天然資源や原油に恵まれていなかったこと、さらに、耕作面積の少ない島国に、人口7500万人以上が居住するという3つの課題を乗り越える必要があった」(米倉氏)

 これらは第二次世界大戦で、日本がアジア地域への海外展開を進めた理由でもある。このハンデを克服する方法こそ、「不足する資源を輸入によって補い、付加価値を付けた商品を輸出することで産業を振興させる」(米倉氏)という従来からの大胆な発想の転換に根ざしたものであった。

 例えば戦前、あらゆる産業を支える鉄を製造する製鉄所は、八幡や室蘭、釜石など原料を産出する地域に配置された。だが、戦後からわずか6年後の1951年、旧川崎製鉄(現JFEスチール)は千葉県に千葉製鉄所を新設する。これは、東京という一大消費地に着目し、需要の変化に柔軟に対応するとともに、輸出を円滑に行える体制を整えるためであった。

 また、加工貿易を振興するに当たっては、輸送船も大量に必要となった。これに対する“解”が軍事技術の民生化である。これにより、いわゆる「インテグラル(すり合わせ)型」の船舶をモジュラー化して製造する手法を確立し、その製造効率を劇的に向上させることで、戦後日本の経済成長を軌道に乗せることに成功した。

「人口過剰という問題は優秀な労働力と膨大な内需と認識転換され、日本は高度経済成長理論に基づく経済発展を成し遂げた。戦後の焼け跡からこの将来像を思い描いた人には敬服せざるを得ない」(米倉氏)

       1|2 次のページへ

Copyright© 2012 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Special

- PR -

Special

- PR -

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、企業の明日を変えるエグゼクティブのための無料の会員制サービスです。
ぜひこの機会にお申し込みください。
下記入会条件を満たされている方には、ITmedia エグゼクティブ事務局が審査の上、入会のために必要な招待状をメールでお送りいたします。

お名前
メールアドレス
貴社名
※正式名称で記入してください
ご所属名
お役職名
貴社の従業員数

Special

- PR -

お勧めコミュニティー

【CIOの条件】2012年の企業のICT戦略

この数日間で、大手各社経営者の年頭所感が発表された。私は自動車工業会、情報通信ネットワーク産業協会それぞれが 主催する賀詞交歓会に毎年出席しているが、今回の会場で各社トップが発表する年頭所感には、これまでにはない“改革”や“挑戦”といった意気込みをひしひしと感じた。

【松浦尚子のワイン&コミュニケーション】女性に薦めて喜ばれるデザートワイン「バニュルス・ブラン」で新年の幕開けを!

気持ちも新たに臨む新年!少しいつもと違うワインを楽しみたいものです。なかでも女性におススメして喜ばれるデザートワインに、珍しい「バニュルス・ブラン」をご紹介したいと思います!残念ながら、日本ではあまり見かけませんが、ぜひ知ってもらいたい極上の酒精強化ワインの一つです。

【夏目房之介の「ほぼ与太話」】馬貴八卦掌新年会

土曜、あまり乗ったことのない東武東上線で李先生の家に集まり、新年会。李先生の料理を昼、夜、堪能。これがうまいのだ。

アドバイザリーボード

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆