IT投資ポートフォリオの作成は、CEO、CIOのミッション――武蔵大学の松島教授ITmedia エグゼクティブセミナーリポート

 ITmediaエグゼクティブは「第11回 ITmediaエグゼクティブ フォーラム 戦略的経営の第一歩はITプロジェクトの可視化から」を開催。基調講演に登場した武蔵大学経済学部教授の松島桂樹氏は、戦略的IT投資管理の実現方法について講演した。

» 2010年08月04日 10時32分 公開
[山下竜大,ITmedia]

 ITmediaエグゼクティブは「第11回 ITmediaエグゼクティブ フォーラム 戦略的経営の第一歩はITプロジェクトの可視化から」を開催した。

 開会にあたり、アイティメディア 執行役員 ITインダストリー編集統括部長、浅井英二は、「ここ数日間、多くの企業が株主総会を開催し、概ね好調な決算発表を行っているが、景気の動向はまだまだ余談を許さない。コスト削減もやり尽くした感があるが、東アジアの新興市場もにらみつつ、ビジネスを拡大していかなければならない。欧米の企業であれば、社内の投資をダイナミックに変更できるが、日本企業ではそう簡単ではない」と話す。

 「いかに効果的な投資判断ができるかが、企業の競争優位性となる。投資の価値を最大化するためには、どこに投資し、どこを削減するかを的確に判断することが必要。今回のフォーラムでは、いかにITプロジェクトを可視化し、戦略的経営を実現するかを紹介する」(浅井)

“一体化”が不況から立ち直る鍵に

 基調講演には、武蔵大学経済学部教授の松島桂樹氏が登場。「戦略的IT投資マネジメント 〜ポートフォリオマネジメント、投資効果の最大化へのツール〜」をテーマに講演した。松島氏はまず、「2010 FIFA ワールドカップ 南アフリカ大会」で健闘したサッカー日本代表の戦いぶりを例に挙げ、「日本チームが活躍できたのは、選手やベンチが“一体化”して戦えたから。いまの日本に求められているのもこの“一体化”だ。世界における日本の役割を理解することで、この後の立ち位置を明確にすることができる」と話す。

 不況期においても高い業績を上げている企業は数多くあるが、その要因を松島氏は、「元気な会社は従来とは違った経営スタイルを持っている」と言う。たとえば、成果主義や効率性、数字経営を否定し、従業員の満足度、幸福度を重視する“利益より人”の経営視点を持っているという。「これこそが、企業の“一体化”を生み出す要因となり、企業再生の鍵となる」と松島氏は話している。

 「逆に不況に弱い企業は、“戦略を持たない企業”だ。コストと品質を競争力とする企業は、ライバルが遅れているときのみに有効な戦略であり、共倒れの戦いとなる。横並びの戦略から脱却するためには、明確な戦略ポジションが必要になる」(松島氏)

 またITを何のために使うのかも重要になる。これまでITは、コスト削減や売上高の増大のための道具として使われてきたが、そのために失業率が増大し、需要低迷やデフレ現象を引き起こしている。

 松島氏は、「こうした状況になるのは、ITの潜在能力を使いこなしていないためだ。ITを人材育成、コミュニティ促進、レディネス(即応性)向上の道具として利用することで、より安心・安全なIT投資を実現できる」と話す。

 それでは、いかに戦略的なIT投資を実現していけばいいのか。松島氏は、「投資内容よりも、他の影響要因が強く関係する。中でも、人的要因、情報の蓄積状況、組織のあり方が重要。効果目標を明確にし、配分可能な予算調整、効果を最大化するための施策検討が優先であり、IT投資ポートフォリオ戦略の立案、実施がCIOの責任となる」と言う。

 IT投資ポートフォリオを実現するためのポイントは、投資タイプによって分類すること、投資タイプごとの予算配分比率を決めること、優先順位をもとにITプロジェクトを採択することの大きく3つ。松島氏は、「IT投資ポートフォリオの比率を決めるのが、CEO、CIOの最大のミッションとなる」と話している。

 具体的な取り組みとしては、エンタープライズアーキテクチャ(EA)の確立が不可欠であり、アーキテクチャやインフラ、ミドルウェア統合、モジュール化、新しい技術の実験・試用など、計画的なIT化を目指すことが必要となる。

 松島氏は、「これまので投資は、生産性の向上、在庫削減、品質改善、販売力向上、顧客満足度向上などが目的だった。これからの投資は、経営戦略の実現を支援するためのIT投資であるべきであり、ITは戦略実現の道具と位置づけることだ」と話している。

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