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» 2010年08月11日 08時49分 UPDATE

クラウドで変える戦略IT(1):現実化するクラウド (1/2)

クラウドコンピューティングで企業の戦略はどのように変わるのか。 「戦略IT投資」「社内ITナビゲーター」「IT業界の観点」などの視点から話してもらう。

[遠山浩二(A.T. カーニー),ITmedia]

ITが生活とビジネスを大きく変える

 平日の朝。起きるとまず、インターネットにつなぎっぱなしのパソコンでメールとスケジュールをチェック。プレゼン用の重たいファイルを短時間でダウンロードし最終確認。非接触型電子マネーで地下鉄に乗り、都心のオフィスで作業につく。無線LANでつながるパソコンを持って打ち合わせへ移動。

 Twitter経由で前職の仲間と連絡を取り、夜は情報交換。時々鳴るスマートフォンのメール着信音が気になる。週末は、近くのコーヒーショップで寛ぎながらiPadで雑誌にぱらぱらと目を通す。かたわらでは、妻と子供が無線インターネットでショッピングを楽しんでいる。時折聞こえるスマートフォンのバイブレーションには目をつぶる……。便利な世の中になったものである。おかげでいつでもどこでも仕事で気が抜けなくなってしまったが。いずれにしても、このようなすごし方はごく当たり前になった。

 振り返ると、過去10年のITの進展で、我々の生活が大きく変わったことがわかる。

 消費者へのITの普及率を見ると、2000年から2008年で、PCは50%から85%に、インターネットは34%から91%に増加。購買行動面では、消費者の半数以上(53%)がインターネットでの購買経験を持ち、4人に1人(26%)に電子マネーが行き渡っている。個人向けeコマース市場は10倍に拡大した。

 企業のIT活用も進んだ。電子商取引の市場規模やEC化率(全ての商取引における電子商取引(EC)の割合)は消費者向けを大幅に上回る(BtoB のEC化率:13.5%。BtoCのEC化率:1.8%(2008年))。

現実のものとなりつつあるクラウド

 2006年にグーグルCEOエリック・シュミットが初めて提唱したとされる「クラウドコンピューティング」が広がっている。自前でコンピューターを持たなくても、雲(クラウド)の向こうのシステムにアクセスすれば、十分なシステム能力を手にいれることが出来る仕組みだ。

 過去ASP(Application Service Provider)が登場し、ITの所有から使用へ、との概念の転換が提唱された。しかし、最低限の利便性とコストメリットを両立できず、定着しなかった。

 クラウドは、複数ユーザーでの共用でスケールメリットを生みながら、一定のカスタマイズが可能である。通信速度の飛躍的向上とコストダウン、仮想化技術及びセキュリティ技術の向上が背景にある。自前システム開発・運用と比べ大幅なコスト削減が可能とされ、厳しい事業環境から期待が強い。

 グーグル、アマゾン、Salesforce.comなどのクラウドネイティブ企業のみでなく、マイクロソフト、IBM、日立、富士通といった国内外の主要ベンダーも本格的な取り組みを宣言し、人材投資、ベンダー間での合従連衡、サービス提供の開始、などに動き始めた。

 機能面では、SaaS(Software as a Service。アプリケーション機能を提供)、PaaS(Platform as a Service。開発環境などのプラットフォームを提供)、IaaS(Infrastructure as a Service。サーバやストレージなどのインフラ設備を提供)の3タイプ。アプリケーションも、メール、ワークフロー、及び営業管理など汎用性の高いものから、ERPまで広がっている。

 ユーザー側でも、IT投資効率化の必要性から、クラウド適用の具体的議論が展開されている。例えば、機能の戦略的重要性、情報セキュリティニーズや信頼性の高さ、を基準とした、パブリッククラウド、プライベートクラウド、及び自前構築の使い分けである。課題は残るものの、自前システムからの決別とクラウドへの移行は有望な1オプションとなりつつある。

 実際、クラウドは、メールや顧客情報管理など汎用性の高い領域についてはすでに多数の導入事例があり、基幹系業務にも展開されつつある。例えば損保ジャパンは、クラウドで構築した顧客管理システムを自社の営業担当や代理店従業員を含め約37万もの多数のユーザーを対象にした大規模展開に踏み切る。

 中古車販売大手のガリバーインターナショナルは、マイクロソフトのクラウド基盤サービスであるWindows Azureを用いて、中古車の査定や商品情報管理、顧客情報管理、販売管理などの中核業務を支援するいわゆる基幹系システムの再構築に着手、今後の海外販売拠点拡大を想定しシステム開発スピードの向上と運用コストの最適化を図る。

 大成建設はプライベートクラウドで再構築した基幹系システムを稼働させるという。クラウドコンピューティングは、企業の情報システムそれ自体だけでなく、企業の戦略IT投資のあり方、情報システム部門のあり方、さらにはIT業界のあり方を多く変えていくものと考えられる。

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