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» 2011年04月19日 08時00分 UPDATE

iPadが生み出すマーケティング新戦略:【前編】マーケティングツールとしての可能性 (1/2)

さまざまなビジネスシーンでiPadの活用が広がっている。本連載では「マーケティング」に主眼を置いたiPadの効果などについて解説していく。

[野崎耕司(ビルコム),ITmedia]

 2010年5月に日本での発売以来、ビジネスシーンにおけるiPadの活用が広がりつつある。営業現場でのプレゼンツールや店頭での販促ツールとして、あるいは商業施設でのショッピング案内や病院での問診など幅広い分野での利用が注目されている。

 このように人が直接的に利用するツールとしてだけでなく、企業のマーケティング活動においてもiPadはその効力を発揮する。本連載では、企業マーケティングやブランディングにおけるiPadのあり方について、具体的な事例を踏まえて解説していく。

マーケティングのあり方を変えたデジタルの波

 なぜ企業はiPadをマーケティングに活用するのか。背景にあるのは、メディアのデジタル化という大きな流れに伴って顕著になったマーケティング上の3つの変化である。

 第1の変化は、消費者のメディア接触が多様化する中で、企業もコミュニケーションチャネルを拡大する必要性に迫られるようになったことだ。今や消費者が接触するメディアは、テレビや新聞、雑誌にとどまらず、インターネットといったデジタルの領域にまでその範囲を広げている。そのため企業は売り上げ拡大に向けて、PCやモバイル端末、iPadをはじめとしたタブレット端末にまで、消費者とのコンタクトポイントを用意する必要が出てきた。

 デジタルの領域では、ユーザー属性やユーザーの行動特性などのデータ取得によって個々人をターゲティングしたマーケティング活動が可能であるため、より戦略的に消費者にメッセージを届けることができるようになった。

 第2の変化は、ソーシャルメディアやスマートフォン、タブレット端末の普及と、それに伴う各種アプリケーションの充実により、企業と消費者のダイレクトなコミュニケーションが可能になったことだ。現在ではTwitterやYouTube、スマートフォンやタブレット端末などの新たなプラットフォームをマーケティングに活用している企業も少なくない。この変化によって、企業は獲得した顧客といかにうまくコミュニケーションを図り、彼らを自社のファンに、いわゆる「ファン化」するかということが問われるようになった。

 第3の変化は、消費者をつかんで離さないコンテンツが求められるようになったことである。情報過多といわれる中、企業には、消費者の心に響く良質なコンテンツを提供することが不可欠である。そこで、クリエイティブ表現が豊かで、企業の世界観をこれまでにない手法でデザインしたものが重要になってきたのだ。

 では、モバイル端末やPCなど既存のツールでは足りず、iPadだからこそ実現できるものとは何であろうか。

マーケティング×iPadによる相乗効果

 iPadは、上述したマーケティングに関する3つの変化に即したソリューションを提供できると考える。

 まず、消費者とのコンタクトポイント拡大の必要性に迫られる中で、iPadは新しいプラットフォームを創造し、企業に新たな選択肢を提供する。これまで企業が消費者に対して自由に表現できる場としては、自社のWebサイトやモバイルサイト、マスメディアの広告枠が主だったが、ここにiPadが加わったというわけだ。PCやモバイルと異なり、iPadのユーザーは情報感度の高い人々(イノベーターやアーリーアダプター)が想定されるため、ユーザーとのブランドエンゲージメントが高まれば、彼らからの好意的なクチコミも期待できる。ターゲットはまだ限定的ではあるが、iPadユーザーとの親和性が高い商材(例えば、グローバル展開する自動車や、世界観を重んじる高級ブランドメゾンなど)においては有効なコンタクトポイントが誕生したといえる。

ブランドエンゲージメントの向上(参考:イノベーター理論/エベレット・M・ロジャース) ブランドエンゲージメントの向上(参考:イノベーター理論/エベレット・M・ロジャース)

 次に、ユーザーといかにうまくコミュニケーションを図り、ファン化するかという点について、iPadはPCの領域を超えた新しいライフスタイルを提案し、ユーザーの生活導線に深く入り込むことができる。

 Webやメールなどのコミュニケーション機能を持ち合わせていることに加えて、モバイル性を兼ね備えたiPadは、デスクトップやノートPCに増して生活に密接している。例えば、ソファーでニュース、広告コンテンツを見たり、テレビを見ながら気になったキーワードをWeb検索したり、通勤途中にECサイトで商品を購入したりと。広告を通じて認知を図り、各種プロモーションを通じて理解浸透、比較検討を促し、購買を促進するといった、消費者の購買プロセスをすべてiPadのアプリケーション上で実現できる。企業が1つのデバイスを通じて、ある消費者が購買に至るまでの一連のコンタクトポイントを得たことになる。

 最後に、マーケティングおいてコンテンツの質が重視される中で、iPadはクリエイティブな表現をもたらし、企業発メディアの可能性を提供する。9.7インチと大きく、高解像度で鮮やかな色彩を表現できるディスプレイは、iPhoneとの大きな相違点だ。そのほか、指先で操作するマルチタッチパネルや、速度を測定する加速度センサー、高感度なサウンドなどによって、Webやメールに限らず、写真、動画、音楽、ゲームなどさまざまなコンテンツを利用できる。商品の写真を360度全方位で表示したり、読み物と動画、音楽を組み合わせたりと、企業はクリエイティブ豊かな表現方法で顧客とのコミュニケーションを極めることができる。

 このように、iPadは現代のマーケティングに求められているエッセンスを盛り込んだツールといえよう。

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