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» 2012年12月03日 08時00分 UPDATE

海外進出企業に学ぶこれからの戦い方:マーケティングの工夫が成功の鍵 食品メーカー (1/2)

「日本の食べ物は美味しい」日本人ばかりでなく、海外から日本に訪れた外国人の多くが共通に持つ日本での感想である。しかし、日本の食品メーカーの海外売上高比率は決して高くない。

[井上浩二(シンスター),ITmedia]

 「日本の食べ物は美味しい」日本人ばかりでなく、海外から日本に訪れた外国人の多くが共通に持つ日本での感想である。しかし、日本の食品メーカーの海外売上高比率は決して高くない。みずほコーポレート銀行の調査によると、食品メーカー主要31社の海外売上高比率は07年より20%程度で横ばいであり、そのうち20社以上は20%に達していない。

 例えば、日本ではマヨネーズ、ドレッシング、ジャム(アヲハタ)などで高いブランド力を持つキユーピーは、昨年度の売上高は4864億円だが海外売上高比率は5%にも達しておらず、ここ数年その割合は横這いである。日本で評価されるブランドを築きながら、なぜ海外での売上が伸びないのであろうか? 海外で成功を収めている他の食品メーカーの取組と何が違うのであろうか? 成功企業の取組も概観した上で、キユーピーのような食品メーカーが今後、海外展開を行う上でどのような視点が必要かを検討してみたい。

 キユーピーは、海外進出という観点からは決して後発組ではない。1981年にはタイの現地企業と技術提携を行い、キユーピー印マヨネーズの製造販売を開始している。翌年には、米国に子会社を設立してやはりマヨネーズの製造販売を開始している。しかし、同社の海外売上高比率は09年度よりあまり変化していないようである。

 同社は、15年度の海外売上高比率10%、海外営業利益率10%以上を目標に取り組んでおり、昨年度は中国での売上を現地通貨ベースで3割伸ばすなど徐々に結果は出てきている。しかし、同社の日本での実績、先行する他社の実績などから見ると、本来の力を出し切っているとは思えない。キユーピーのような日本で評価されている食品メーカーが海外に進出して結果を出すためには、どのような視点や取組が必要なのであろうか。

 海外で成功を収めている食品メーカーとしてまず名前が挙がるのは、恐らくキッコーマンだろう。同社の2012年3月期の海外売上高比率は45%、海外営業利益率は69%を占めている。1957年という非常に早い段階から本格的にアメリカに進出し、醤油=キッコーマンと認識されるまでに浸透させた。

 キッコーマンが「醤油は肉と合う」ということをスーパーでデモンストレーションし「デリシャス・オン・ミート」という販売キャンペーンを繰り返し行い市場で浸透を図って成功してきたのは有名な話である。「おしょう油をその国の文化にしっかり根ざした調味料にしていこう」というのが、キッコーマンの基本的な海外戦略である。

 ヤクルト本社も60年代から海外にビジネスを展開し、2012年3月期の海外売上高比率は24.3%、海外営業利益率は41.2%となっている。ヤクルト本社は、日本流のヤクルトレディによる宅配型の営業を地道に展開することでここまでビジネスを広げており、現在は海外のヤクルトレディが約4万人いる。消化管内の細菌叢を改善し、宿主に有益な作用をもたらしうる有用な微生物と、それらの増殖促進物質であるプロバイオティクスを商品のコアとしている同社は、この販売方法が最適だとしている。

 プロバイオティクス製品が効果を発揮するためには、継続的な使用が前提とされる。スーパーなどで拡販して一時的に購入しても効果が出ないため、リピーターを作ることは難しい。ヤクルトレディが効果と使用方法を丁寧に説明し、効能を理解した上で、少額の購入を継続してもらえる顧客を開拓する必要がある。そのためには、日本で作り上げた宅配型営業が最適であり、その手法を愚直に実践し海外のビジネスを展開しているのである。

 両社を含め、これまでに海外で成功を収めてきている食品メーカーに共通している要素は、言うまでもなく「泥臭い営業」である。これまで食したことがないものを口に運んでもらう、継続して買ってもらうためには、まずその良さを分かってもらわなければならない。「体験」である。

 一度良さが分かり、美味しさ、栄養、安全性といった日本製品の品質を理解してもらえば、成功の道筋が見えてくる。先陣を切った多くの企業が、「泥臭い営業」を愚直に行ってビジネスを作り上げてきたわけだが、これから海外進出を本格化しようという企業には、過去にはなかった追い風が大きくいって3つあると思われる。これらを最大限に利用すれば、日本の食品メーカーはスピーディーに海外展開を実現できるのではないだろうか。

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