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» 2016年09月12日 07時12分 UPDATE

激変する環境下で生き残るためのTransformation 〜コニカミノルタの事例に学ぶ〜:第4回:顧客志向とオープンイノベーションの徹底した実践でTransformationの軸となる尖った製品を創る (1/3)

ソリューション提供型へのTransformationと言っても、メーカーとしてはその軸には製品がある。軸が尖り続けていなければ、ソリューションも差異化が難しい。今回は、Transformationを支えるコニカミノルタならではの尖った製品開発の取り組みに光を当ててみる。

[井上浩二(シンスター),ITmedia]

 「スマートフォンを、どれぐらいの割合で"電話"として使いますか?」ある時、筆者は松崎取締役会議長(※「崎」は正式には旧字の立つ崎)からこんな質問を投げかけられた。筆者も、ほとんどはメールやスケジュールの確認などで使っており、そもそもの機能である電話としては1割ぐらいの頻度でしか使っていない。「今後は、MFPなども同じような発想で開発していこうと考えています」と松崎氏は楽しそうに話を続けた。

 MFPをはじめ、単なる製品販売からソリューション提供型の企業へとTransformationを図っているコニカミノルタだが、ソリューションのコアには、やはり「尖った製品」がある。そういう製品を弛まず生み続けていってこそ、メーカーならではのTransformを実現できるのだ。「尖った製品」を開発してバリューアップし続け、更にこれを軸にソリューションも生み出して改善し続けることができる企業になるために、コニカミノルタはどのような取り組みを行ってきたのであろうか。今回は、特に製品開発・改善に着目してこの要因を考察してみたい。

 コニカミノルタは、MFPを軸とした情報機器、ヘルスケア、計測機器、光学システム、機能材料など様々な分野で事業を展開している。各々の事業では、コアとなる製品群を保有しているのだが、それらの製品は「ジャンルトップ戦略」という基本方針に基づいて開発されてきた。ジャンルトップ戦略とは、成長の見込める特定の分野・製品に経営資源を集中し、その力で尖る製品を世に出して競合を凌駕することで、価格競争に陥らずに収益を出すビジネスを作るという戦略である。この実践のために、3年から5年先を見て、マーケット(市場と技術)・競合・自社の観点から事業と製品を分析し、「(技術的に)できる」だけではなく「ビジネスで勝てる、継続的に利益を出せる」もの、つまり「どこで尖れるか」を考えて事業と製品を選択している。

 そして、製品の継続的な改善・改良、あるいは方向転換の意思決定を行うために、上記の観点で現場責任者が経営者に週次で重要なマーケットの変化などのポイントをレポートで提出し、月次でFace to Faceのミーティングを行い、必要な情報をチェックしている。松崎氏も、重要なポイントに関しては自ら状況説明を促す質問などを行い、現場責任者の抜け・漏れを防いで来た。つまり、尖れる事業・製品の選択を行った上で、経営者の管理の下で週次でPDCAサイクルを回すスピード経営を行うことで、ジャンルトップを維持し続けているのである。

 しかしながら、現在のビジネスの基盤を支えている製品の中には、多くの日本メーカーと同様、元々はプロダクトアウトの発想から生まれてきたものも多い。例えば、現在のプリンティングソリューションの一翼を担うプロダクションプリンターは、2000年代前半の常識を技術的に覆そうという発想から生まれてきた製品だ。当時のカラープリンターは印刷速度が遅く、20枚/分が最速だった。

 このような状況に対し、開発チームでは"50枚/分"を目指すという目標を立てたのだが、これは "どう使うか?"という市場ニーズに根差した考えではなく、完全にプロダクトアウト的な発想だったとのことである。技術的バックボーンもなかったが、後発であったため"尖った製品"を作ろうというコンセプトで開発を行い、結果として、その後の当領域におけるビジネスの拡大に結びつけたのである。

 機能材料事業の主力製品であるVA-TAC (VA型液晶用視野角拡大フィルム)も、同様にプロダクトアウト的な発想から生まれた製品である。VA-TACは、2000年代前半に液晶テレビが世界的に普及する中、写真フィルム用の支持体として製造していたTACフィルムを他の用途で活用できないかという発想から生まれた。これは、視野角を広げても液晶画面の画質を低下させないためのフィルムで、高性能な液晶テレビの普及に貢献してきた製品である。蛇足になるが、当時の開発テーマリーダーを務めた常務執行役機能材料事業本部長の葛原氏から、この製品を生み出すに際の興味深い話を伺ったので紹介しておく。

 祖業の一つである写真フィルムは、ケミカルを重ね塗りして必要な機能を作り込む塗布技術がコアであったため、VA-TACも当初はこの技術で開発が進められた。しかし、写真フィルムとは違って大面積でコスト競争力と薄さが求められる液晶では、重ね塗りにより機能を実現する「プラス」の思考では求められるコストパフォーマンスを満たすことができなかった。

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