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» 2018年04月23日 07時10分 公開

エグゼクティブ・リーダーズ・フォーラム:Alpha GoからAlpha Zeroへの進化は汎用性の追求――AIの進化で目指すのは業務の圧倒的な効率化 (1/2)

IoT、ビッグデータ、ソーシャル、クラウドなど、デジタル技術は著しい進化を遂げている。それでは、デジタル技術の進化は、産業革新や組織変革、業務革新にどのような影響を及ぼしているのだろうか。

[山下竜大,ITmedia]

 「デジタル技術による産業革新、組織変革、業務革新」をテーマに、通算第77回のエグゼクティブ・リーダーズ・フォーラム定例会が開催された。最初の講演には、早稲田大学 ビジネススクール教授の根来龍之氏が登場。「デジタル化と破壊的イノベーション 〜IoTとサービス化の流れ〜」と題して講演した。

IoTは「サービス化」と表裏の関係

早稲田大学 ビジネススクール教授 根来龍之氏

 デジタル化は、「モジュール化」「ソフトウェア化」「ネットワーク化」の3つの要素で構成されている。このデジタル化は、既にさまざまな産業界で推進されている。例えば自動車産業では、車体の標準化やコンポーネントの共通化、コンポーネント内のモジュール化などが進んでいる。

 ソフトウェア化は、エンジン制御、さらに衝突軽減ブレーキや路外逸脱抑制機能など、今やソフトウェアなしでは自動車は動かない。さらにネットワーク化は、テレマティクス技術として始まり、今やネットを通じた稼働データの収集、車車間通信(車同士の通信)、路車間通信(信号等の道路インフラとの通信)へと発展している。根来氏は、「テスラでは、ソフトウェアを、ネットワークを介して最新に更新する。また自動運転は、自動車自体の自律的制御とネットワークによる制御で実現されている」と話す。

 デジタル化は、破壊的イノベーションへと続いていく。クリステンセンの定義では、破壊的イノベーションは、パフォーマンスの低いところからスタートした新しい技術の改善が進み、やがて十分なパフォーマンスを実現し、市場のメインセグメントのユーザーが既存技術から新技術を利用するように転換する現象である。

既存企業は、既存顧客の満足度をさらに高めようとし、既存技術の改善に取り組み、新技術の採用が遅れてしまう。そのため、この現象は「イノベーターのジレンマ」と呼ばれる。

 この現象が、どれだけ普遍的かという議論は長く行われている。全ての技術が、すぐに破壊されるわけではない。イノベーターのジレンマは、「“部分”代替の技術が、“完全”代替に短い期間で移行するときに発生する」(根来氏)

 それでは、IoTは完全代替(既存技術が完全に新技術に置き換わること)になり得るのか。根来氏は、「まず部分的にIoTと呼ばれる製品が登場し、やがて多くの製品がIoTでなければならないところまで成長する。例えば、サッカーボールとシューズにセンサーを取り付け、ゲームをモニタリングする。これにより、ゲーム中の運動量やキープ率などのデータを自動的に取得できる」と話す。

 このデータを、ITの世界に蓄積し、分析すると、選手の能力差や特徴を把握することができるので、戦略の最適化に役立てることが可能となる。また、選手の練習方法を改善し、パフォーマンスを最大限引き出すことも期待できる。ただし、根来氏は、「これは、初期段階のIoT活用であり、データ収集部分が自動化された(モニタリング)にとどまる」と話す。例えば、データの自動解析が進めば、IoTの次の段階に進むことになる。

 このような、IoT接続機能を持つスマート製品のケイパビリティは、「モニタリング」「制御」「最適化」「自律化」の4段階で考えることができる。

 例えば、航空機分野におけるGEのIoTプラットフォーム「Predix」は、飛行中でもエンジンの状態をモニタリングすることができる。異常があれば、自動で解析をして、データセンターにアラートを送り、到着する空港あてに必要な部品を半自動的に手配することができる。これにより、エンジンに異常が発生しても、定時運行が可能になる。ただし、整備自体が自動化されるわけではないので、この事例もまだ完全代替には至っていない。

 GEでは、「モノ」の販売から、「モノ+サービス」へのビジネスモデルへの変革を目指している。こう考えるとIoTの進化は、ビジネスモデルの「サービス化」と表裏の関係にあることが分かる。建設機械管理や次世代マネージド・プリント・サービスなどが、IoTによる最適化のビジネスモデルといえる。

 根来氏は、「IoTの最終目標は、最適化、自律化であることから、周辺ビジネスを巻き込む形で進み、事業領域が拡大するという性質がある。単なる製品が、スマート化され、ネットワーク化されて、システムと統合し、さらに異業種の領域が融合される。この融合への動きはスピードが重要になる。素早くやらなければ、他社が参入してしまい、データ蓄積において遅れてしまう」とする。

AIの活用により人財の最適配置を実現

 2番目の講演には、KPMGコンサルティング Advanced Innovative Technology ディレクターの山本直人氏が登場、「業務の本質に迫るAI活用 〜AIが導き出す人の価値と最適配置〜」をテーマに講演した。KPMGでは、既に複数の顧客企業において、AIを戦略的に活用するフレームワークを実践しているという。

KPMGコンサルティング Advanced Innovative Technology ディレクター 山本直人氏

 Google DeepMind社によって開発されたコンピュータ囲碁プログラム「Alpha Go(アルファ碁)」が、2016年3月に韓国のトップ棋士に勝利したことは広く知られている。囲碁は、将棋やチェスより指し手が多いので、コンピュータが人間に勝てるのは、はるか先といわれていたが、Alpha Goは、関係者の予想を覆し世界のトップ棋士を打ち負かした。

 2017年11月には「Alpha Go Zero」が、同年12月には「Alpha Zero」が登場した。Alpha Goは、AIに読み込ませ過去の人間による棋譜をもとに打ち方を自己学習したが、Alpha Go Zeroは、囲碁のルールを教えただけで、自己対局で打ち方を学習した。さらにAlpha Zeroは、囲碁だけでなく、2時間の学習で将棋を覚え、さらに4時間の学習でチェスを覚えたという。

 「注目したいのは、AIにおけるデータの位置付けである。企業においても、ビッグデータとの向き合い方を考える時期に来ており、目的に対するデータの品質、精度に着目すべきである。Alpha Go Zeroにおいては人間のデータは既にノイズにすぎず、そもそもデータすら与えていない。AIとデータの向き合い方における究極系といえるだろう」(山本氏)

 業務における現在のAI活用は、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などと組み合わせて業務の表面的な部分だけを自動化するものである。一歩進んだ企業では、AIとChatbotを連動させるような自然言語活用に取り組んでいる。山本氏は、「AI活用がさらに進むと、AIが業務の深い部分に入り込み、経営の意思決定までを支援するレベルに到達すると考えるが、そこに至るには大きな壁がある」と話す。

 現在の王道の利用としては、定型化された人の作業を代替し、均一の生産性や品質を担保する目的でAIが活用されている。新たに王道となりつつあるのが、世界レベルでのクレジットカードの不正利用検知や医療分野における超微小なガンの検知、大規模建造物の超高精度かつリアルタイムな予防保全など。こうしたAIの活用は、人の能力では困難であり、人の能力を拡張することを目的としている。

 こうしたAIの拡張は、業務の本質に迫れているのだろうか。山本氏は、「単純作業の代替にAIを活用し、10%、20%の効率化を目指すのではなく、100%、200%の圧倒的な業務高度化を目指せるAI活用でなければならない。その上で、経営の意思決定スタイルの変革を実現するのが業務の本質に迫るAI活用である」と話す。

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明治学院大学 経済学部准教授

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