いまやコンシューマー向けのWebは、UXを優先したデザインや使いやすさが求められている。アドビはこうした流れが企業アプリケーションにも到来するという。
Flashを抱えるアドビは、Web標準技術でWindowsとMacintosh対応のデスクトップアプリケーションを開発&配布するためのランタイム「AIR」(Adobe Integrated Runtime)の正式版を年内にもリリースする考えだ(現在公開されているのはβ版)。異なるOSのアプリケーションランタイムとして、HTML/CSS(Cascading Style Sheets)、Ajax、JavaScript、Adobe Flash、ActionScript、Adobe Flex、PDFなどを使用し、RIA(リッチ・インターネット・アプリケーション)の適用範囲をデスクトップへと拡大することを可能にする。
AIRは、ブラウザ内のWebアプリケーションでは実行不可能な高度な機能やWeb上のサービスをユーザーに直接提供することを主なビジョンとして掲げ、従来のWebアプリケーションでは不可能だった、ブラウザからデスクトップへのドラッグ&ドロップやオフラインでの利用を可能にしている。
従来のWebアプリケーションは、ブラウザさえあればサービスが動くため、多くの人々にリーチできるものの、機能としてはブラウザの枠を超えることができず、クライアントのリソースに自由にアクセスすることはできなかった。また、開発者にとっては、アプリケーションの自由度がブラウザで制限されるため、パワーをフルに引き出せないという不満があった。
そうしたことをもっと自由にしながら、今まで作ってきたWeb系APIなどのサーバサイドのリソースをクライアントアプリケーションでも継続して使えるようにすることが、AIRで実現する世界だという。
「サーバ側に統合ロジックなどを必要としないところがAIRの魅力。しかも、その技術自体はカッティングエッジなものではない。従来の延長線上にある普遍的な技術を利用して、今までにないユーザー体験をもたらすことができる」と語るのは、アドビのプロダクト&セールスエンジニアリング部でプロダクトスペシャリストを務める太田禎一氏だ。
今や、コンシューマー化したWebには、ユーザーエクスペリエンス(UX)を優先したデザインや使いやすさが求められている。それが、ユーザビリティという人間の感覚や感情を予測するRIAの実装へとつながっているのだ。
「コンシューマー向けWebは熾烈な弱肉強食の世界でユーザビリティを洗練してきた。ガラパゴス諸島に生息する生き物のように、“特異な生存”が許されてきたエンタープライズ向けアプリケーションにも、その流れは必ず起こる」と指摘するのは、アドビのマーケティング本部でエンタープライズ&デベロッパーマーケティング部部長を務める小島英揮氏。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授