その一方で、民間企業の技術力や専門性と、行政実務の知識や経験の融合を通じた県の業務改革も注力。今年は「WiMAX」などを4つのテーマで共同研究の受託先を公募した実績を誇る。
川島氏は、行政機関には今後、県全域の産業発展に向けた調停者としての役割が求められると見る。企業間の法的紛争を円滑に解決するためのルールを策定などが代表的なものだ。
「CIOは業務改革、県庁情報化、地域情報化、地域IT産業育成という面から行政を支援し、地方自治体の発展に貢献することが今、期待されている」(川島氏)
さまざまなステークホルダーに対する広報活動の重要性は、企業にとって年々増しつつある。これは、地方地自体においても同様だ。市民サービスの向上のために、住民に対する密な情報提供を欠かすことができないからだ。
トヨタ自動車で常務役員を務める中井昌幸氏は、長年の広報業務経験を基に広報活動におけるポイントを説明した。
中井氏によると、広報活動を行う際に最初に実施すべきなのが、社会から自分の組織がどのように見られているのかを把握することだ。そのためには、組織の内外を問わず意見や情報を収集しなければならないという。同社では毎日、世界中の報道による影響の分析に時間を割いているという。
「一昨年ではイメージ向上につながるニュースに79億人、イメージ悪化につながりそうなニュースに3億人が到達した。特に後者は対応が遅れるほど被害も拡大する。広報担当者は社内へ情報をフィードバックする重要な役割も担っている」と、中井氏。
収集された情報は、広報活動にまつわる企画立案に活用され、情報発信プロセスも見直す。企画から発信までを円滑に進めるには、企画に合わせて容易に内容を構成できるよう、組織内で活用が見込めそうな情報を絶えず探りつづけておくことがポイントだという。また、発信した情報に矛盾が生じないよう、関係者の間での情報共有の徹底も不可欠だ。
情報発信後に欠かせない作業は、広報活動を改善するための効果測定作業だ。トヨタ自動車では、そのために全国を複数のエリアに分け、各エリアの販売店や新聞社に意見を聞くための機会を定期的に設けている。自治体においても、第三者による定期的な広報活動のチェック機能は欠かすことができないだろう。
トヨタ自動車は社会貢献活動を積極的に推進するため、約90名の社員から成る社会貢献推進部を組織。現在、中国での植林活動などを進めるとともに、取り組みの周知に力を入れている。その理由は、良き企業市民として同社を改めて正しく認知してもらうためだ。
「これまで同様の活動を行ってきたものの、従来はあえて積極的に広報してこなかった。しかし、社会貢献活動の重要性が世界的に強く叫ばれる中で、事業活動以外の社会貢献を周知する必要を痛感するに至った」(中井氏)
広報活動のあるべき姿や、組織の歴史や活動内容に加え、時代にも左右される。各自治体には市民サービスの向上に向け、それらを総合的に捉え、理想の姿を自ら見極めることが求められているのかもしれない。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授