国際CIO学会は11月22日、CIOの資格の制度化を提言した。同日開かれた国際CIO学会の秋季研究大会では、CIO資格化に向けた研究発表が行われた。
CIO資格化へ――そんな動きが進み始めている。
「CIOは官公庁と企業とでは役割が違う」「CIOへのキャリアパスはあるのか」「CIOはまだ権限があいまい。どうしても関係調整型になってしまう」――11月22日に早稲田大学で開かれた国際CIO学会の秋季研究大会で、企業や行政のIT活用のリーダーとなるCIOを巡り、議論が繰り広げられた。
国際CIO学会は、社会のIT化が進む中で、競争力を生み出す中核リーダーとしてのCIOの在り方を研究している学会組織。早稲田大学の小尾敏夫教授が中心となって2006年に設立され、研究者を中心に200名ほどの会員を抱えている。
2007年3月には「CIO資格化研究会」と「CIOスクール分科会」を設置。CIOのコアコンピタンスやスキルなどの定義について話し合われ、CIO候補となれる人材を認定する資格化を検討してきた。
11月22日に出された声明では「CIOの社会的および職業的地位の確立を目指し、資格の制度化を提言する」とまとめられている。
米国では、1996年にクリンガー・コーエン法で連邦政府のCIOのコアコンピタンスを明確に定義。これに基づき、大学がCIOコースを設定し、修了者にCIO候補の認定を授与する仕組みがある。この人材が政府と民間企業との間で流動化しており、職業的にもCIOというポジションを確立することにつながっているという。同学会ではこれに倣い、地方自治体や企業がCIOを選任するための助けになる資格認定制度の確立を目指している。
CIO資格化研究会では、米政府が定めているコアコンピタンスを手本に、第一弾として地方自治体に求められるCIOのコアコンピタンス案を提示。「政策と組織」「リーダーシップとマネジメント」「調達管理」「予算要求」「システム改修・保守・運用」など12の大項目を定義し、その下に具体的な中項目を整理した。それらスキルを身につけ、資格試験に合格した人に資格を付与する方法を模索している。
業務特性に応じて複数の資格が存在する情報処理系の試験とは異なり、ケーススタディなどを重視した単一の認定になるべきだとしている。
CIOスクール分科会では、民間企業のCIO育成に向けた教育制度を検討している。経産省やIPAが進める実務責任者(CIOスタッフ)レベルの高度情報化人材ではなく、CIO候補ともいえる統括者レベル以上の人材の育成を目指す。教育内容には、講義形式の知識・技術の習得だけでなく、コミュニケーションやリーダーシップといったヒューマンスキル教育、ビジネスケースの研究、実務研修など、総合的な教育制度が必要とされた。
CIO資格化に向けた動きは始まったばかり。現時点では、研究会がまだCIO像を定義するレベルにとどまっている。そもそも企業はCIO認定を受け入れるのか、受講者は何をインセンティブに教育を受けるのか、需給の議論はまだこれから。米国では国がCIO認定のための教育コースを指定するなどしているが、日本ではどうするのか、などまだ議論は尽くされていない。
とはいえ、企業にも自治体にも単にITサービスを提供するだけでなく、ITによって企業の全体最適を図り、ビジネス価値を生みだせるIT部門長を超えるCIOの存在が求められていることだけは確かだろう。
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明治学院大学 経済学部准教授