電子政府/自治体の推進に向け、地域社会を構成する市民や企業の参加を促すことは欠かせない。そのために、CIOが果たすべき役割とは?
今、地方行政におけるCIOの果たすべき役割が問われている。電子政府、電子自治体を推進し、有意義な活動を展開するには、IT環境や諸制度を整備するだけでなく、地域社会を構成する市民や企業などの自発的な参画を促す仕組みが欠かせない。
この課題に対してCIOはいかに取り組んでいくべきなのか――11月22日に早稲田大学で開かれた「ワセダCIOフォーラム」では、さまざまな立場から意見が交換された。
地域活性化センター理事長の石田直裕氏は、国および地方自治体における電子政府の現状を説明した。
2001年に高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)が成立して以来、社会全体の情報化に向けた「e-Japan重点計画」が立案され、行政の情報化についての計画や法律が毎年策定されてきた。
現在掲げられている電子政府の実現に向けた具体的な目標は、「オンライン利用率50%の達成」と「政府全体の最適化」の2つ。それらは、電子自治体の目標にも反映されており、今後の重点的な取り組み事項として「行政手続き等のオンライン化およびオンライン利用の促進」や、全体最適の見地からの「ITを活用した行政改革の推進」などが掲げられている。
その実現にあたっては課題も残されている。行政の電子化を推進するためには、組織内のITガバナンスの強化が欠かせない。しかし、2006年度にIT人材育成・確保指針が策定されたものの、地方自治体ではその約3割でまだCIO職すら選任されていないのが実情だ。2004年からすでに開始された公的個人認証サービスも、その利用は伸び悩んでおり、発行済みの電子証明書は累計で約29万枚にとどまる。
それらへの対策もすでに講じられているという。2007年4月に策定された新電子自治体推進指案では、IT人材の育成やCIOを中心としたPDCAサイクルの強化や、電子自治体を効率的に構築するための、システムの共同化・標準化が共通的な推進事案として掲げられている。公的認証サービスの利用促進に向け、利用範囲の拡大もすでに検討され始めている。
「地方自治体にとってCIOはChief Information and Innovation Officerにほからならない。地域ネットワークの強化を通じた新産業の創出など、自治体にとって新たな価値を創造するのがCIOの役割にほかならない」――佐賀県でCIOを務め、都道府県CIOフォーラムの会長でもある川島宏一氏は、自身のCIOとしての役割をこう述べた。
今年2007年3月に佐賀県CIOに招聘された川島氏は、佐賀県知事の古川康氏から与えられた課題を基に、「全国最先端県庁の実現」「県職員のITスキルの向上」など9項目のミッションを策定。各ミッションについて、あるべき姿や目標、現状、課題要因分析、対策、評価方法をできる限り可視化し、作業の進ちょくを管理している。
また県民サービスの価値を高めるために、「公」から「民」へのサービス移管も積極的に推進している。佐賀県では、それまで県が行っていた2300もの業務について、タスクとコストを明文化して公開。NPOなどから代替案の応募を受け付けており、応募があった都度、コストとサービスの双方から評価することで、そのための予算を外部に回すことも少なくない。すでに371件の応募があり、197件で採用に至っているという。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授