これまで、最も優秀なビジネスプロセスは「人間の頭脳」と当たり前のように考えられ、業務が設計されてきた。「特に、日本の頭脳は優秀で、現場に任せておけば何とかなった。これが、BPMが普及しない一番の理由かもしれない」(栗原氏)。だが、人手に頼ったプロセスでは統制面でも変化対応という点でも理想とは言いにくい。
日本IBMインフォメーション・マネジメント事業部ソフトウェア・エバンジェリストの石井宏和氏が紹介した米国の金融機関が取り組んだBPMの事例では、人的処理に依存していたローン承認プロセスを自動化することで、7日間掛かっていたプロセスを2日にまで短縮、1ローン承認当たりのコストは250ドルから60ドルに削減できたという。
さらに、プロセスが自動化されたことで、ヒューマンエラーを抑止でき、記録によるコンプライアンスも実践できるようになったという。
ただ、定義する業務フローの粒度や例外処理をどうするのか、など実践は難しいところ。BPMに取り組む玉田氏もこの点を課題に挙げる。
「正直なところ、これらの取り組みはツールがなくてもできる。しかしツールがなければ、継続的に維持していくのは難しい」(玉田氏)
栗原氏は、さらにBPMを超え、状態データと履歴データを組み合わせてリアルタイムに分析(BAM)できるところまで進められれば、競合との大きな差別化につながるとも言う。
「英国では、自動車保険にリアルタイム性を持ち込んだ“発想の転換”の例がある。GPSを搭載して走行パターンの従量制で、保険料を決めるというサービスがある」(栗原氏)
BAMは、コールセンターや在庫管理、ダイナミックプライシングなど環境変化に対する迅速な対応が差別化となる領域に適しているとされる。しかし、保険のようなリアルタイム性が高いと思われてこなかった保険のような領域にも“発想の転換”し、リアルタイム性を持ち込めば、今までになかった競争力を生み出す可能性も秘めている。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授