「保険金不払い問題」乗り越える保険業界――サービス品質改善にITができることとは?(1/2 ページ)

保険金不払い問題に対し行政処分が出されるなど、保険業界は経営管理態勢の抜本的な改善を求められている。大手保険会社では、業務プロセスの改革によって、サービス品質改善に向けた取り組みが進んでいる。

» 2007年12月19日 11時00分 公開
[堀哲也,ITmedia]

 情報統合はビジネスプロセスの改革にもつながる。「ITmedia エグゼクティブ」では12月11日、保険業界のエグゼクティブを招待し、情報統合をテーマにラウンドテーブルを開催した。

 保険金不払い問題に対し行政処分が出されるなど、保険業界は経営管理態勢の抜本的な改善が喫緊の課題だ。大手保険会社では、業務プロセスの改革によって、サービス品質を継続的に改善していこうとする取り組みが進んでいる。

 「残念なことに、契約時のごく当たり前のことができていなかった」と反省するのは、パネルディスカッションに登場した三井住友海上火災保険のIT推進部部長の玉田孝一郎氏。支払洩れのない保険金という「当然品質」を超え、損害サービスを通じて顧客から信頼され選ばれる「感動品質」を達成しよう、と同社も改革に乗り出している。

玉田孝一郎氏 三井住友海上火災保険のIT推進部部長戦略&海外システム担当の玉田孝一郎氏

 業務効率に重きを置いたIT戦略から脱却し、業務品質の改善サイクルをITの側面から支えるのが、情報システム部門を率いる玉田氏の役割だ。

 損害保険は顧客と直接接点を持つだけに、顧客の体験プロセスを改善できれば、それが競争力にもつながる。顧客の不満を仮説分析し「仮説→検証→実行計画→本格展開」というプロセスを構築しようとしている。

 「苦情などの情報は山のようにあるが、現場任せになっていた。これら情報を商品や顧客から見た体験プロセスに生かし、改善を図っていきたい」と、玉田氏は言う。

コンテンツが持つ本当の価値

栗原潔氏 テックバイザージェイピー代表取締役の栗原潔氏

 テックバイザージェイピー代表取締役の栗原潔氏は「定型データを分析するBIや、非定型データを管理するECMなどの情報管理の世界は、徐々にBPM(ビジネスプロセスマネジメント)と、オーバーラップしてきている」と指摘する。

 「これまでのエリアにとらわれて、思考を止めてしまうのはもったいない。これらの境界領域が差別化のためには面白いところだ」(栗原氏)

 現在、世の中のデジタルデータの80%は、非定型データと言われる。音楽や映像などがこの非定型データの代表だが、企業内ではWordといった文書コンテンツがそれに当たる。これらコンテンツはトランザクション情報などの定型データに比べて、ファイルの形式の標準化が十分に進んでいないなど、管理の難しいところだが、エンタープライズサーチなど、情報へのポインタを集約する仮想統合の技術も登場してきている。

 とはいえ、コンテンツはその意味内容(セマンティクス)にこそ価値がある。単純に集約するだけでは、コンテンツの価値を引き出せない。「コンテキスト(背景情報)とともに評価できれば、さらに情報の価値を向上できる」(栗原氏)。

 例えば「この製品が気に入った」という消費者からのメールを単独で見て「これはうれしい情報だ」とだけ見ては、意味がないが、意味内容とともに評価すれば、「実は販売中止の製品だったが、特定のユーザーからは評価が高かった」ということが分かるかもしれない。

 「製品は良かったが、ターゲットが悪かったのではないか? 新製品の企画に結び付くかもしれない――という視点が大切だ」と、栗原氏は言う。

 「非定型データのコンテンツととらえるのではなく、ビジネスプロセスのトリガーととらえる考え方が重要になってくる」

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