「さまざまなメディアにかかわっているわれわれにとって、分野の垣根を越えた連携を強化するツールの活用は課題。なかなか成果につながらなかった」と、アーノルドの広告デザイン技術を管理するクリエイティブマネジャー。しかしその状況は変わってきた。
テレビ画面に映る雪山登山者の超アップの映像。必死にピッケルを振るって氷壁を登ろうとしている。
「もうへとへとだ」と彼はパートナーに苦しそうに言う。
「行ってくれ。おれのことはかまうな」
「そんなまねはしないぜ」とパートナーは答える。
「いつまでやってるのよ。マッサージに間に合わないわ」と女性の声が入る。
カメラが引くと、2人の登山者は、氷の地面が1メートルほど隆起した場所で腹ばいになっているだけ。彼らの演技を、同じく腹ばいになった友人がビデオカメラで撮影していたというわけだ。そして、画面はクルーズ船のロングショットに切り替わる。続いて、走る犬ぞり、カヤック、ウォールクライミングの映像が次々に映し出される。
バックに流れるのは、イギー・ポップの「Lust for Life」。「クルーズの枠を大きく超えた、盛りだくさんのツアーです。外の世界をご満喫ください」とナレーションが流れる。このCMは、広告代理店アーノルドによるロイヤルカリビアンインターナショナルの広告キャンペーンの一部だ。
アーノルドでは、オフィス間のコラボレーションを可能にするワークフローシステムやデジタル資産管理ソフトウェアからスポットCMの効果を測定する解析ソフトウェアまで、ITが広告ライフサイクル全体にわたって活躍している。2001年にアーノルドは、ザイネットの資産管理システム「WebNative」をいち早く導入した大手代理店の1つとなった。
副社長兼ITディレクターを務めるグレッグ・フォルサム氏によると、その後、このシステムは業界標準として定着した。アーノルドはこのシステムを使って、デジタルコンテンツ・ライブラリのカタログ化や利用管理を行っている。
しかし、広告デザイン技術を管理するクリエイティブマネジャーのエバン・ショア氏は、アーノルドが資産管理システムを完全に使いこなすまでには何年もかかったと語る。
「さまざまなメディアにかかわっているわれわれにとって、分野の垣根を越えた連携を強化できるツールを活用することはかねて課題だった。資産管理システムはまさにそうしたツール。だが、なかなかそうした成果につながらなかった。スタジオアーティストだけが使っていたからだ。そこで、ユーザーを広げるために社内のに力を入れた」と、ショア氏は言う。
そのおかげで、今では営業担当者も資産管理システムを使っている。例えば、使う画像はクライアントの承認を得て、印刷会社に送付している。また、資産管理システムのポータル機能を活用して、オフィス間で共同作業をできるようにしている。
「これで、お互いの作業の成果物を見ることができる。以前は、電子メールを使わなければそうしたことができなかった。全員が同じツールを使わなければ、コラボレーションするのは難しい」(ショア氏)
アーノルドは、2007年も新しいツールを導入した。スピンネーカーネットワークソリューションのワークフローソフトウェアは最終的に、大幅にカスタマイズしてこれまで使ってきた「FileMaker Pro」に取って代わることになる。新しいワークフローソフトウェアには、制作と承認の効率化が期待されている。
ただし、その実現のためには、クリエイティブ担当者がより定型的なプロセスに慣れなければならない。「このソフトウェアを使う場合、皆が一定のやり方で仕事をすることになる。そうすることで大幅に効率が上がる」と、ショア氏は言う。
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