ブログやSNSの流行と相まってネットPRなどが注目されている。ネットの活用は少ないリソースと低価格で実施できるとあり、予算の限られた企業には魅力的だ。その半面でネガティブな点も見えてきた。
記者経験と外資系ソフトウェア企業でのマーケティング・広報マネージャー経験を生かし、昨年からさまざまな企業にマーケティングや広報の戦略策定や実務を支援するビジネスを展開するようになった。記事を書く側と、書いてもらうためのネタを提供する側の両方を経験したことが強みだ。
PR代理店や企業のPR担当者は、記者として未熟だった私に記事を書かせるため、さまざまな工夫をして私に接した。いま再び記者に記事を書いていただくためのネタを提供する側になり「自分がどのようにしてもらったか」ということを思い出し、実践している。
広報やPRという言葉の意味は広い。さまざまな定義があるが、本稿では、広告のようなお金を使わずに、メディアを通じて自社の知名度向上になる活動をすること、と定義して話を進めたい。
2007年の動きとしては、ブログやSNSの流行と相まってPRもネットを使うということが注目された。例えば、ブログを活用したPRだ。ブロガーにお金を払って記事を書いてもらう「やらせブログ」なども話題となった。また、記者向けのポータルサイトにプレスリリースを掲載するというネットPRなども注目された。
ネットの活用は低価格でなおかつ少ないリソースで実施できることもあり、予算の限られた企業にとってはとても魅力的だ。しかしながらその半面、「社内にPRのスキルが残らない」「記者は果たしてその記者向けポータルサイトを見ているのだろうか」「ネットには載ったけど記事にならない、新聞に載らない」「ネットだと記者と話をする機会がない」など、ネガティブな面も見えてきた。
2008年はネットでのPRに加えて、記者と広報担当者のお互いの顔が見えるような対面のPRに回帰する現象が起きるのではないかと予測している。それでは、対面でPRを行う広報担当者に求められる資質とは何なのか? それは「営業スキル」である。
広報と営業は近いと思うのだ。商品にもよるが、営業担当者はクライアントの要望を聞き、予算を聞き、導入のタイミングを探り、意思決定のキーパーソンを探す。そして商品のデモができる人間を従えて提案していく。クライアントのおメガネにかなえば、製品を購入してもらえる。
広報の場合、各媒体の特徴を調べ、読者層を調べ、自社製品の購買層が購読している媒体を見つけ出す。そして担当者を調べ、その興味の内容やスキルに合わせた説明をする。必要があればテクニカルな専門家を連れてさらに説明をすることもある。さらに、記者から特集などの予定を聞き出し、それに合わせて記事が書けそうなネタを提示する。記者が納得すれば記事になり、納得してもらえなければ記事になることはない。
この一連の作業は営業活動と非常に近いスキルが必用になる。単にしつこく商品名を連呼して嫌われてしまえば成果につながらない。自分たちの利点ばかりを専門用語でアピールしつづけては、記者も閉口する。記者に嫌われれば、その媒体とは疎遠になってしまうこともある。
ある記者は言う。取材を終えて帰ってくると、机の上にはプレスリリースのFAXの山。PCを開けば、100を超える未読のプレスリリース。そんな状態の記者のことを考慮して対応をする必要があるわけだ。もちろんこんな状態であれば、単にメールで送り付けるだけのプレスリリースが記事になる確率は著しく低いだろう。
スキルが個人に大きく依存するため、ある広報担当者が転職をしたら、今度は転職先の会社の記事が頻繁に雑誌に掲載されるようになったという話もよく聞く。
大手企業では「広報は売り上げにつながらない。ただ情報を伝えたり、会社のロゴマークを管理したりするだけだ。暇で楽な仕事だから、営業成績の低かったXXさんにしよう」という決め方をしたり、スキルを考慮せず機械的に配置転換を行うケースもあるという。
中堅企業では「専任担当は置けないから、新人に片手間でさせよう」「自社サイトにプレスリリースだけのせておけばいいや」というようなケースもあると聞く。広告にあまりお金を使えない中堅企業であれば、広報はなおさら重要だ。是非とも会社の未来を左右する重要なポジションであることを理解し、営業センスのある優秀な人間を配置してもらいたい。
人と人とのつながりを重視した広報活動。ネットにより広報活動も便利になった、相手の事情を考慮した対面が望ましいことが多いことを忘れてはいけない。
オルタナティブブログ「きょこ コーリング」を運営している加藤恭子が運営するコミュニティーです。IT業界のPR、マーコム、マーケティングなどについていろいろ議論をしたり情報交換もできればと思います。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授