映像や動画という強力なツールが簡単に手に入れられるようになった今、企業はどのような一手を打てるか? 2008年に重要度を増すキーワードとして「ビジュアル力」が挙げられるかもしれない。
ビジュアル力。2008年に、より一層重要度を増すキーワードだと考えている。ここでいうビジュアルとは、視覚に訴えるということであるが、さらにそれを応用することまでを含める。もちろん、私が言うのであるから、ユビキタスのコンテクストでの話であり、綺麗にお化粧することの勧めではない(もちろんそれはそれで、綺麗になることは素敵なことだが)。
2007年9月末には、光ファイバーも遂に1000万契約を突破した。DSLやケーブルテレビを合わせると2800万契約に迫り、世帯普及率はほぼ6割に達した。ブロードバンドが当たり前の状況となり、ネット上での映像や動画のやり取りも日常茶飯事。「Youtube」に代表されるように、いわゆるコンテンツとして映像や動画を作成、編集したり、投稿、検索することも、ほとんど万人のものとなった。この種のリテラシーはアマチュアレベルでも高まってきている。
企業においても、昨今キーワードとなっている「見える化」に対する取り組みが進み、視覚に訴える形で原価計算やプロセス管理などを行う事例も増えている。さらに、2007年問題を目の当たりにし、技能伝承を真剣に考える企業も少なくない。やはり熟練の技は、言葉でなく視覚だ、ということでここでも映像や動画の扱いは注目の的である。
このように、映像や動画を自然なものとして扱える環境はできた。しかし問題なのは「本当に使いこなせているかどうか」である。
先の技能伝承を例にとってみよう。私の拙著『ユビキタス・ネットワークと市場創造』(野村総合研究所刊・共著)において、熟練の技能伝承は、ネットワークを介して動画をやりとりできるようになれば、離れたところからでも可能である、と記した。概念的には、今でもこの考えを否定するつもりはない。
ただ、1つ注意しなければならないのは、動画によって受け手が吸収できる技能には、限界がある、ということである。
例えば、人間国宝級の職人やオリンピック出場選手の技能を見たからといって、すぐにマネできるわけではない。参考にしたり、ヒントを得ることはできるが、その多くは受け手の技量に依存する。
ここで現実的な解は何かというと、スーパー熟練をたくさんつくり出すことではなく、平均点を一定レベル超える人々をつくることである。つまり、並以下の人に、ちょっとした気付きや、簡単なノウハウを映像で伝授して、並以上に仕立て上げることにある。これにより、技能レベルの底上げが、実現できるのである。
このような現実的な解をどれだけ見出していけるのか。ここに、ビジュアルを使えるかどうか、応用力が問われるのである。
映像や動画という、極めてインパクトの強いツールを我々は手にした。企業の業務プロセスに対する応用もたくさん考えられる。しかし、正直、まだまだ使いこなしているとは言えない。
2008年は、この強力なツールをどのようにして自分たちの力にできるか。これが、2008年を有利に駆け抜けるヒントだと私は信じている。
ユビキタスネットワーク環境は、その可能性のほとんどが未開です。有効に使っていくためには、様々な視点、アイディア、知恵などなどが必要です。皆で考えていきましょう。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授