ITmedia エグゼクティブで「みんなのミニ書評」コミュニティーを主催する堀内浩二氏に、エグゼクティブに役立つ2007年のビジネス書3つを推薦してもらった。そして2008年に期待ししたいビジネス書は?
2007年に出版された本の中から、個人的なベスト3を選んでみたい(訳書は、訳書が2007年に出版された本を対象とする)。なお、「個が立つ社会」に資すると感じた本から選んでいることをお断りしておく。
『ビジョナリー・カンパニー』は、長期間にわたって成長を続ける企業に共通する因子を解き明かした名著。その著者の1人ジェリー・ポラス氏が、その個人版を著した。「ビジョナリー・ピープル」とは『自身の活動の場、仕事の世界、あるいはコミュニティで、大なり小なり、独創的な成果を上げながら、その一方で自分なりに生きがいを感じる生活を送ってきた人たち』。永続的に成功を収めている人は『自分なりに定義した意義、創造力のある思考スタイル、そして効 果的な行動スタイル(p42)』という3つの要素を調和させようと努力して(かつそれに成功して)いるというのが、著者の発見である。
高品質なアウトドアウェア、ユニークな経営スタイル、そして熱心な環境問題への取り組みで知られるパタゴニアの創業者、イヴォン・シュイナード氏の自伝的経営論。筋金入りの冒険家でもあるシュイナード氏は、自然環境への負荷が軽くなる選択肢があるなら、短期的な利益の逸失を恐れずに信念に従う。
著者は人事コンサルタント。世界30カ国に10万人の従業員を抱える自動車部品メーカーのデンソーにおいて、どうやって企業理念たる「デンソースピリット」を共有していくか。プロジェクトのドキュメンタリーを軸に、著者の学びや発見が語られていく。理念は「布教」できないという発見が印象的。
ビジネス書のトレンドはアメリカが作っている。手っ取り早く予測をするために、未訳のビジネス書をチェックしてみると、『経験経済』の著者らが“Authenticity: What Consumers Really Want”を書いている。この本に限らず、変わりゆく消費者を読み取る試みには注目したい。
日本の動きとしては、大局的にはアメリカの影響を受けているものの、若者を中心とした社会起業への関心の高まっている点を見逃せない。2007年11月に刊行された『「社会を変える」を仕事にする 社会起業家という生き方』は、社会起業に挑戦する人たちの雰囲気をよく伝えている。またワークライフバランスの先端事例となる個人や組織の事例も、雑誌や書籍で見かけるようになってきている。
2008年には個人的な事例や組織や社会への提言など、働き方をめぐる領域で良書の登場を期待したい。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授