タイプ別IT導入説得法――懐に飛び込め間違いだらけのIT経営(2/2 ページ)

» 2008年01月23日 09時00分 公開
[増岡直二郎,ITmedia]
前のページへ 1|2       

消極的に足を引っ張る経営陣

 ITに対して一切の関心を示さないトップ・経営陣も、実は少なくない。「ITはよく分からないので任せる」が口癖だ。任せてもらうのは有り難いが、いざと言うときにさっぱり役に立たないから、消極的に足を引っ張っていることになる。「無関心型」である。

 一方IT投資に積極的だが、実はITをよく理解していないために投資の仕方を誤り、やがてアンチITに転向するトップ・経営陣もいる。

 年商10億円ほどの情報システム工事業者のB社長は、仲間から評判を聞いてグループウェアを導入した。社内にメールが行き交うようになって、Bは「ついにわが社も先進企業になった」とご満悦だった。しかし、社内の帳票も会議も残業も減らなかった。それもそのはず、グループウェア導入方針も目的も不明確で、旧業務のまま導入したのだから、効果が出るはずがない。

 この場合、BはITを理解しているとは言えない。Bは、やがて「ITは役に立たない」と言い出した。このタイプは「体裁型」と呼ぶのがいいだろう。

IT担当者の対応の仕方を考える

 いずれの場合も、悲しいかなITについて無知であるがために理解できないのだ。

 では、トップ・経営陣はどうするべきか。少なくとも自己変革の意欲は必要だろう。

 絶望的に見える「嫌悪型」「建前型」は、あえてITを理解し導入する必要はない。ITは企業の生産性と経営の質を向上させる一手段に過ぎないから、IT以外の手段で目的を達する自信があれば、それで良い。ただし限界を感じたら、素直にITを理解する努力をすべきだ。

 「無関心型」は、無関心を装っているのだとすれば、経営者たる者、装うべきではない。装い通せると思う経営者、または本音で無関心を決め込む経営者は、経営者の資格はない。即刻退陣すべきだ。最後に「体裁型」はせっかくIT投資を思い立ったのだから、もう一歩踏み込んでITを理解する気持ちを持つべきだ。前3タイプとは、本質的に違うのだから。

 次に、情報システム部門はじめ、周辺の者たちはどう対応すべきか。

 「嫌悪型」は権威に弱く、「いいカッコウしたがり」屋だ。確信犯的「建前型」も含めて、彼らの上位者、すなわち上司・顧客・役所などを動かすのが良い。筆者はコンサルティングを依頼された会社の頑固なトップを、顧客にお願いして動かすことに成功した。

 また、相手の土俵に上がる方法も有効だ。原価低減なり優良顧客拡大なり、彼らが固執するテーマから入るのだ。

 「無関心型」は無色で、「建前型」は導入する気があるだけ、取り組みやすい。情報システム部門はじめ関係者は、進退を賭けるくらいの意気込みで彼らの説得に臨むべきである。

 ただ、いずれの場合も一過性では意味がない。ITに対する関心や理解を継続させなければならない。そのため、苦労をしてきっかけをつかんだら、続けて洗脳して行くべきである。

関連キーワード

経営 | IT投資 | 業務改善


ますおか・なおじろう

日立製作所、八木アンテナ、八木システムエンジニアリングを経て現在、「nao IT研究所」代表。その間経営、事業企画、製造、情報システム、営業統括、保守などの部門を経験し、IT導入にも直接かかわってきた。執筆・講演・大学非常勤講師・企業指導などで活躍中。著書に「IT導入は企業を危うくする」(洋泉社)、「迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件」(洋泉社)


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆