製造業の発展の遅れがIT大国を生んだトレンドフォーカス(2/2 ページ)

» 2008年04月09日 07時00分 公開
[富永康信(ロビンソン),ITmedia]
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工業発展の遅れがIT市場の進展を加速

 インドでは独立後、60年代にかけて政府主導の混合経済体制が敷かれ、産業許認可制度を軸とした広範な経済統制で企業活動は大幅に制限された。60〜80年代のインディラ・ガンディー政権下による統合主義的経済運営時代を経て、80年代の規制緩和と91年のNEP(新経済改革)により、海外貿易と直接投資が自由化され、マクロ経済不均衡の是正と混合経済体制の見直しがなされた。そのインド経済の躍進に大きく貢献したのが、労働生産性が高いIT産業だった。製造業の発展の遅れがソフトウェア産業の進展を加速した。

 インド政府は、テクノロジー支給金や減税などでIT産業を支援する一方、年間40万人を輩出する理工系大学の育成にも力を入れた。主な人材供給源となるのが、MIT、スタンフォードに次いで評価の高いといわれるインド工科大学(IIT)とインド科学大学院大学(IISc)である。その結果、IT技術者の雇用数は06年度に163万人にまで拡大、この人材層がITアウトソーシング先としてのインドの優位性を保つ源泉になっている。

 また、インドITは典型的な輸出産業である。06年度のIT産業の輸出額は319億ドルで、IT産業全体の7割近くを占める。06年度のIT産業全体に占める輸出シェアは66.7%で319億ドル。その67%が米国、15%が英国。一方日本向けのシェアは、04年度の2.8%から05年度は1.5%に低下している。

 さらに安さも強さの要因だ。米国のIT技術者の賃金を100とした場合、日本は141に対し、インドはわずか16。人件費の高騰が叫ばれているが、従業員1人あたりの収益を見ると、IBMが24万ドル、アクセンチュアが12万ドル、富士通が32万ドルに対し、ウィプロは利益率を30%確保しながら1人あたり6万5千ドル程度と、健全な経営を維持しつつ国際的な価格競争力が高いことがわかる。

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