「医師は必ずしもコンピュータになじんでおらず、進んでデータ入力をしようとは思わない」とフェアクロース氏。「われわれは何度か抗議を受けた。その言い分は、『これでは仕事にならない。紙に戻した方がいい。手書きのカルテが必要だ』というものだ。わたしは、すべてを電子化する必要があることを強調して説得してきた。EMRシステムが今後の業務基盤になるからだ」
マンノ氏は、移行時の苦労を次のように回想する。
「多くの医師にとって、新システムを使いこなすようになるまでは非常に大変だった。わたし自身もそうだ」と同氏。「わたしは1977年からコンピュータを利用してきたが、新しいソフトウェアプログラムは微調整が必要だったからだ。ITセンターは最新の機器を導入して整備が進められていたものの、選定されたソフトウェアプログラムに難があった。完全なペーパーレス環境を構築するには、設定が不十分。このため、細かな追加設定を行わなければならず、かなり手間がかかった。今も完全には満足していない」
問題はほかにもあった。ネバダがんセンターは幾つかの音声入力ソフトウェアプログラムを試し、最もニーズに合うものを見つけた。ニュアンス・コミュニケーションズの「Dragon」製品だ。
当初の計画では、医師は無線タブレットPCを用いて多くの仕事を行うことになっていた。しかし、医師が使った感想は、スプレッドシートを見たり、画像を調べたりするには画面が小さすぎる、というものだった。バッテリー駆動時間も十分ではなく、無線タブレットPCはデスクの隅に置かれたままになっていた。
結局、フェアクロース氏は軌道修正し、診察室にPCを置くことにした。だが、そのために壁の配線をやり直さなければならなくなった。
また、ネバダがんセンターは組織体制を変更し、ITを業務に直結させることを目指している。フェアクロース氏は、最初はCFO(最高財務責任者)に直属していたが、現在はプレジデント兼COO(最高執行責任者)のサンドラ・マードック氏の直属だ。そしてフェアクロース氏は、内部顧客に対するIT部門の対応の仕方を変えようとしている。
「彼らはIT部門に丸投げしていた。システムがどのように機能するか、どのように実装されるべきかは、IT部門が把握しているという認識からだ」と同氏。「今では、われわれが業務部門ともっと密接に連携している。以前はこんな調子だった。『一番いい製品を見つけてきて、明日から使えるようにしてくれ』。IT部門はそうすることもできるが、そうすべきではない。製品について事前に意見や要望を吸い上げないと、成功はおぼつかないからだ。たとえ業務部門からそうした話が来ても、すぐには引き受けないだろう。まず彼らとよくコミュニケーションを取るようにしている」
途中の道のりにはさまざまな困難があったが、ネバダがんセンターは順調な軌道に乗っているようだ。
「わたしは多数の施設の立ち上げに携わってきた」とフェアクロース氏。「取るべきステップは頭に入っている。結局、重要なのは、適切な人材としっかりした計画を用意することに尽きる。今では、われわれが受けるサポート依頼の電話は、『東海岸のホテルからホームページになかなかアクセスできない』といったものの方が、システムに関するものよりも多い。これは喜んでいいことだ」
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明治学院大学 経済学部准教授