破たんした証券会社と成長を遂げた寒天会社、何が明暗を分けたのか?問われるコーチング力(2/2 ページ)

» 2008年10月01日 08時30分 公開
[細川馨(ビジネスコーチ),ITmedia]
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業績よりも社員を重視した世界トップ企業

 伊那食品工業という会社を知っているだろうか? 長野県伊那市にある寒天メーカーで、48年間増収増益を続けた企業である(2005年の寒天ブームの際に増産した関係で、翌2006年に記録は途絶えたが、その後また増収総益を続けている)。国内シェア80%、海外シェア15%で、寒天メーカーでは世界のトップ企業である。

 成功の秘けつは何か。寒天という斜陽産業の中で、業績ではなく社員や地域を第一に考えることにより成長を続けてきたのである。同社のビジョンはどのようなものか? 社是には次のように書かれている。


 「いい会社を作りましょう」


 会社が考えるいい会社とはこういうことだ。

 「いい会社とは、単に経営上の数字が良いというだけでなく、会社をとりまくすべての人々が、日常会話の中で『いい会社だね』と言ってくれるような会社のことです。さらに、社員自身が会社に所属する幸せをかみしめられるような会社をいいます」

 このビジョンはとても明確で、わくわくさせられるものではないだろうか。ビジョンは掲げるだけでは意味がない。事あるごとに立ち戻り、今していることがビジョンに合ったものなのか振り返る必要がある。

 伊那食品は、このビジョンの下に「無理な成長を追わない」「敵をつくらない」「成長の種まきを怠らない」という経営方針を打ち立て、着実に業績を伸ばしてきた。景気が良いときには、企業は設備投資をして企業規模を大きくすることに走ってしまいがちである。しかし景気が後退すればリストラせざるを得ない可能性は高い。伊那食品は、急激な成長は望まず、着実に一歩ずつ進みながら、増収増益を遂げてきた。

 また、3万坪もある広大な会社の敷地の中に木々を植え、近隣の人が自由に足を運んで憩う場所にしている。地域の人にも愛される企業になっているのである。

 同社から学ぶことは多い。ビジョンは作って終わりでは意味がない。それに基づいて経営方針を立て、意思決定するときなどには常に立ち戻って考える必要がある。破たんしたLehmanはビジョンを振り返っただろうか? ビジョンは素晴らしいものだったが、それを怠ったのではないか。


プロフィール

細川馨(ほそかわ かおる)

ビジネスコーチ株式会社代表取締役

外資系生命保険入社。支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年に当社を設立し、代表取締役に就任。コーチングを勤務先の保険会社に導入し、独自の営業システムを構築、業績を著しく伸ばす。業績を必ず伸ばす「コンサルティングコーチング」を独自のスタイルとし、現在大企業管理職への研修、企業のコーポレートコーチとして活躍。日経ビジネスアソシエ、日経ベンチャー、東商新聞連載。世界ビジネスコーチ協会資格検定委員会委員、CFP認定者、早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師。


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