各国向けにローカルカスタマイズした車種を生産するにあたって、工数ひいてはコスト増という課題も残されている。だが、要望を本社に伝え続けることで、ニーズに合致した新製品の開発がこれまでの実績から容易に推測されるため、必然的に現地スタッフがニーズを本社に熱心に届けることが可能になる。その結果、現場に活力がもたらされるというメリットもあるという。
一方で、トヨタには「アップ・アンド・インの人事制度」「創業者の哲学」「神経システム」といった3つの結合力も存在するというのが大薗氏の考えだ。これらによって、創業者の哲学にのっとった人事制度が整備されているのだという。
トヨタで理想とされる人材は、広い心を持ち長期的視野に立って、多様な視点から自立的に考えることで、組織を動かす行動を起こせる人物である。もちろん、チームワークや粘り強さも欠くことができない。そうした人材を育成するため、教育・訓練への投資は惜しまず、長期的な安定雇用も提供する。上司には質問がしやすい、助けを求めやすい環境を作ることや、とんがった部下を排除せず、最も有能な部下を手放すと言ったルールを順守することが求められている。こうした背景があるからこそ、信頼に基づいた関係の中で、外部からの圧力がなくても自己変革を続けたり、自己を否定する行動をとったりすることが可能になっているのだ。
「トヨタでは日々の業務に拡張力と結合力を支える仕組みが組み込まれており、それが、ときに大きな飛躍の原動力となることで、ビジネスを拡大させてきた。グローバル展開を進めている企業にとって、矛盾と絶えず向き合ってきた同社の取り組みに見習うところは少なくないはずだ」(大薗氏)
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授