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» 2009年01月16日 08時00分 公開

「2009 逆風に立ち向かう企業」ローランド・ベルガー:筋肉質な経営を目指し“本社力”を強化せよ (2/2)

[聞き手:伏見学,ITmedia]
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現場にとっては仕事が命

ITmedia トヨタのような大企業であれば筋肉質になるためのトレーニングも可能ですが、中小企業は当面の危機をどう乗り切るかに精一杯で、短期的な効果を求めがちだと思います。

遠藤 確かに中小企業はさらに苦しい状況にあると思います。しかしその中でも、経営をスリムにして筋肉質にしていくことは喫緊の課題です。トヨタだって今までは無駄があったし、あえて手を付けなかった問題点もあったはずで、今回の危機はたまったうみを吐き出すチャンスです。

ITmedia ソニーやキヤノンなどでは人員を大量削減して経営改善を図ろうとしています。こうした手段を取ることで現場に混乱は生じないのでしょうか。

遠藤 企業も安易に派遣切りのようなことをやっているのではなく、苦渋の選択としてやらざるを得ないという状況のはずです。できれば人は雇用していたいわけです。ただし現場というのは仕事があってこそなので、ここまで急激に仕事が減ってしまうとお手上げとしか言いようがありません。わたしもオイルショックの直後に電機メーカーに入ったので、入社して最初の仕事は草むしりでした。現場にとって仕事がないというのはいかに辛いことか身をもって体験しています。

 一刻も早く需要が回復して仕事を創出できるようにするのが現場を元気にする施策なのですが、「ハーフエコノミー」と言われるほど経済規模が縮小しているのでどうしようもありません。よく経営者の方々は「ジェットコースターに乗っているようだ」と話しています。徐々にではなく一気に需要が減っているのがマーケットの現状です。

ITmedia すると他力本願で市況の回復を待つことになるのでしょうか。

遠藤 逆にジェットコースター型だからこそ、底を打つのも早いかもしれません。何年もこうした状況は続きませんよ。だらだらと景気が下がり思うように雇用調整ができないよりは、一気に底まで落ちて早く回復に向かったほうが好ましいとも言えます。

今こそ本社力を磨くべき

ITmedia 改めて聞きます。日本企業は今何をすべきですか。

遠藤 トンネルを抜けた後の勝負は「俊敏性」で決まると考えます。これが経営にとって重要なキーワードになります。これを意識して今から準備しておかないと、トンネルを抜けてからの主導権は取れません。

 今は平時ではなく緊急時といえます。力を蓄えて脱出したときに一気に駆け抜けられるかどうかが大切です。真っ暗な場所にいると人間はどうしても動かずにじっと耐え忍ぼうとします。それだといざ明るいところに出てもすぐには動けません。逆に俊敏性を身に付けることによって、小さな企業にも勝機は生まれるはずです。

 加えて、わたしが最近強調しているのは「本社力」です。トンネルを抜けた後にどういうシナリオを描いて何を実現するのかということを考えるのは、現場ではなく本社の仕事です。例えば、新規事業をどう打ち出すのか、M&A(企業の合併・買収)をどう仕掛けるのか、事業の選択と集中をいかに徹底させるかというのは、まさに本社あるいは経営者が決めなければなりません。今こそ本社力を磨き、大きな構想、いわゆる「Big Picture」を打ち出すべきです。それほど本社の存在が重要な局面にいるのです。

今起きていることを学ぶことが大切

ITmedia ところで、遠藤さんは早稲田大学大学院の教授という顔をお持ちのほか、かつてはビジネススクールのグロービスでも教鞭をとられた経験をお持ちです。人材教育に関して、力点に置いていることや心掛けていることがあれば教えてください。

遠藤 実は「ビジネスは果たして教えるようなものなのか」と思うこともあります。ビジネスの知識や今までの理論を教えることはできるけど、それは1つのインプットに過ぎないわけです。逆に知識偏重になって現実の世界をその枠組みでとらえようとする学生もいます。経営の知識などは後付けで、それよりも今起きていることから何を学び、どう考えるかが重要なのです。

 今回のような「100年に1度の危機」というのは、体験したくたってできるものではありません。まさに生きた教科書が目の前にあるのです。先日お会いしたある自動車会社の社長も部下に対して「100年に1度という貴重な体験をしていることに感謝しなさい」と話しているとのことでした。漫然と目の前で起きていることを眺めているのではなく、そこにいる緊張感や当事者意識を持って、何かを学び取ろうという姿勢が必要なのです。

ITmedia 最後に、2009年の個人的な目標を教えてください。

日本の宝ともいえる現場力の重要性を今まで以上に伝えていきます。世の中に知られていない現場力の強い会社はたくさんあります。こうした優れた会社を広めていくとともに、現場を基点にした経営の大切さをアピールすることがわたしの使命です。

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