それでは、クリエイティブ・テンションを持つためにはどうしたらいいのだろうか。わたしは次の2つを提唱したい。
(1)将来を見据える
(2)自分を信頼する
1つ目は、「将来を見据える」ことである。不安がまん延している時代だからこそ、将来を見据えて考えることが重要である。1年後、組織がどうあってほしいか、そのために今何をすべきかを考える。そして、計画を立てて実行していく。
目の前のことだけを考えていると、人は不安になるものである。1年後の自分や組織の姿を想像し、やるべき課題を考える。そうすると、心が安定し冷静になれる。
2つ目は、「自分を信頼する」ことである。組織のリーダーとなって活躍する人たちはとても優秀だと思う。リーダーは成果を残し続けてその地位にいる人だからだ。現在は100年に1度の経済危機と言われるが、リーダーたちはこれまでにも多かれ少なかれさまざまな危機を乗り越えてきたのではないだろうか。自分を信頼し、自分の持つ力に自信を持って欲しい。
一流のスポーツ選手は、クリエイティブ・テンションの持ち主である。スポーツの世界は勝つか負けるかしかない、とても厳しい世界である。不安やその場の感情に流されていては、第一線で活躍することはできない。野球で3割バッターと言えば、とてもバッティングが上手な選手という印象を受けるが、それでも残りの7割は失敗している。また、長い競技生活の中では、ブランクに陥ることも数多くある。しかし、7割の失敗から学び、できる自分、勝つ自分を想像し、それに向かって全力で努力する。
一流のスポーツ選手に共通しているのは、絶対的に自分を信頼していることである。日々すさまじい努力をしており、自分の力を信じている。この自己信頼感は、クリエイティブ・テンションを持つ上でも、とても大切なことである。エモーショナル・テンションに流される人は、自分に自信が持てず、自分を信頼できない。
ビジネスの現場もこれと同じではないだろうか。リーダーたちは、刻々と状況が変化する中で、次々と結果を求められる。失敗することもあるが、将来を見据えるとともに、自分を信じて取り組んでいく。リーダーたちが、スポーツ選手のクリエイティブ・テンションの保ち方から学ぶことは多い。
リーダーの自己変革について何度となく話してきた。変革する上で、人は壁にぶつかる。しかし、この壁を打ち崩せなければ、変革はできない。この壁はエモーショナル・テンションでは決して打ち崩せないのである。今こそリーダーは1年後の自分をイメージして、胸の内にある不安や恐れを払拭してほしい。
最後はクリエイティブ・テンションが必ず勝つと信じている。
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細川馨(ほそかわ かおる)
ビジネスコーチ株式会社代表取締役
外資系生命保険入社。支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年に当社を設立し、代表取締役に就任。コーチングを勤務先の保険会社に導入し、独自の営業システムを構築、業績を著しく伸ばす。業績を必ず伸ばす「コンサルティングコーチング」を独自のスタイルとし、現在大企業管理職への研修、企業のコーポレートコーチとして活躍。日経ビジネスアソシエ、日経ベンチャー、東商新聞連載。世界ビジネスコーチ協会資格検定委員会委員、CFP認定者、早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授