感情に流されるリーダーになるな問われるコーチング力(1/2 ページ)

リーダーが自己変革を遂げるためには、大きな壁を乗り越える必要がある。その緊張感から逃げ出してしまうのではなく、楽しみに変えてしまうような心構えが重要だという。

» 2009年02月18日 07時45分 公開
[細川馨(ビジネスコーチ),ITmedia]

 企業が業績予想を次々と下方修正している。トヨタ自動車が2009年3月期の最終損益を3500億円の赤字(業績データ公表以来初の赤字)になる見通しを発表し、日産自動車も2650億円の赤字予想、加えて2009年度中の2万人の人員削減を発表した。高画質の液晶テレビで市場をけん引していたシャープも1000億円の赤字に下方修正している。これから欧米企業の決算が発表されるが、厳しい状況は続くだろう。

 前回、ピンチをチャンスととらえることが大切だと話した。今回は、このような時代において、リーダーにぜひ知ってもらいたい概念を紹介する。「クリエイティブ・テンション(創造的緊張)」「エモーショナル・テンション(感情的緊張)」である。

クリエイティブ・テンションとエモーショナル・テンション

 クリエイティブ・テンションとは、マサチューセッツ(MIT)工科大学のピーター・M・センゲ教授が提唱したものである。『フィールドブック 学習する組織「10の変革課題」』(日本経済新聞出版社刊)では、次のように書かれている。


 リーダーシップは、「クリエイティブ・テンション」を保持する能力から生まれる。クリエイティブ・テンションとは、個々がビジョンを明確にして、(能力の及ぶ限り)現実の状況についての真実を語るときに生み出されるエネルギーのことである。

 (中略)

 自分の「ありたい姿」をビジョンとして描き、現状を明確にとらえると、ビジョンと現状のギャップが明確になる。このギャップ(緊張、テンション)は解消しようとする方向に向かう性質があり、それが個人の成長を促す源になることから「クリエイティブ・テンション」(創造的緊張)と呼ばれる。この「クリエイティブ・テンションを意識して選択をする」行為は、すなわち、自分の望む結果を生むために真剣に取り組むことであり、〈自己実現(マスタリー)〉の主要な実践法になっている。


 現在の自分と思い描く姿にギャップがあり、それを埋めようとする。それがいい緊張感となり、達成しようと努力したときに大きな成長を遂げるのである。これがクリエイティブ・テンションである。

 一方、現在の自分と思い描く姿にギャップがあると、達成できないと感じ(エモーション)、それに到達するために努力するのではなく、目標を下げたり、ゴールを作らなかったりする人がいる。これがエモーショナル・テンションである。自分のプライドや恐れ、不安、感情に流されてしまうのである。このようなリーダーについていきたいと思う部下はいないだろう。

クリエイティブテンションとは? クリエイティブテンションとは?

 リーダーたちは、自分の職務を遂行できないのではないか、結果は残せるだろうかなど、さまざまな不安を抱えている。経営者たちは、厳しい経済状況の中で、会社が存続していけるだろうかという不安にさいなまれている。不安になると、入ってくる情報に対して過敏になり、人の話を聞かなくなる。そして、安心感を得るために、不安な気持ちを誰かにぶつけたくなり、つい部下や家族に八つ当たりしてしまうといった悪循環に陥る。厳しい時代だからこそ、センゲ教授が言う、この緊張感を楽しむ――クリエイティブ・テンションが求められているのである。

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