――環境問題への施策は多くの企業がCSR(企業の社会的責任)として強調していますが、実際の取り組み状況はいかがでしょうか。
橋爪 かなり意識は変わってきています。従来、環境問題対策はコストがかかるものでしたが、先述した積載量の改善は効率化だけでなくコスト削減にもつながります。エコドライブも同様です。少ない燃費で多くの距離を走れるため、運送業者にとってはコスト削減になります。今や環境対策こそがコスト削減の近道と言えるでしょう。
エコに関する情報交換を図る場として、行政を中心に立ち上げた「グリーン物流パートナーシップ」にもメーカーや運送業者など物流にかかわる多くの企業が参画しています。
――物流改革の推進役としてCLO(Chief Logistics Officer:ロジスティクス最高統括者)の設置を主張しています。CLOに求められる役割や能力は何ですか。
橋爪 ロジスティクスにしてもサプライチェーンにしても、カバーする範囲は広いです。以前の物流であれば、工場や倉庫を個別に管理するだけでうまくいきましたが、今は材料調達から出荷まですべての動きを把握して全体最適しなければなりません。購買、調達、販売など各部門の業務を調整し、サプライチェーンの改革によっていかに企業利益を生み出すかを常に経営視点で考えることのできる能力がCLOには必要です。
――協会の概要について教えてください。
橋爪 JILSは、1970年に設立された日本物的流通協会(後に日本ロジスティクス協会と改称)、同じく1970年設立の日本物流管理協議会の2つの任意団体が統合し、通商産業省(現・経済産業省)、運輸省(現・国土交通省)共管の社団法人として1992年に誕生しました。物流にかかわる調査や研究、人材育成などを目的に活動しています。
両団体が設立した当時は高度成長時代で、物を効率的に流すという発想はありませんでした。作れば売れるという時代であり、荷主のメーカー、下請け、運送業者は各自ばらばらに動いていました。米国から「フィジカル・ディストリビューション(物流)」という考え方が紹介されたことで、物流の効率的な管理の重要性をメーカーをはじめ産業界が認識するようになりました。
その後、オイルショックを契機に作れば売れる時代は終わり、消費者ニーズの多様化に伴う多品種少量生産の時代が到来しました。従来のように、とにかくロットを大きくするという物流方法では大量在庫あるいは欠品が出てしまいました。ロジスティクスという考え方が米国から入ってきたことで、物流に対する改善が見られ、多くの企業では市場ニーズを中心に据えたサプライチェーンでなければ全体効率は上がらないという認識が広まりました。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授