筋肉を保つとほかの部位の若さ度や老化危険因子にさまざまな良い効果をもたらします。運動時に筋肉から放出される乳酸やアデノシンニリン酸(ADP)などの疲労物質は、脳にある下垂体という器官を刺激して、成長ホルモン分泌を促します。これは若さと健康を保つ大切なホルモンであり、ホルモン年齢の若返りをもたらします。筋肉から分泌される血管増生因子(ミオトニン)は血管年齢の若返りに作用します。骨や関節は筋肉によって守られているので、転んでも骨折しにくい身体になります。
筋肉負荷トレーニングを行うと睡眠の質が高まり、ストレスによる心身ダメージからの回復も早まります。これは心身ストレスの対策になり、神経年齢の若さを保ちます。男性も女性もエグゼクティブはストレス負荷が強いので、ストレスに強い身体作りは重要です。
代謝の面からは、筋肉量が多い人は筋肉を維持するための必要エネルギーが高いので基礎代謝が高まり、太りにくい身体になります。筋肉から分泌されるミオカインという物質が脂質代謝を改善し、脂肪分解を助けます。肥満の是正と予防にも、メタボリックシンドローム対策にも筋力増強が大切であることが分かっています。このように筋年齢の若返りは生活の質(QOL)を向上させてくれるのです。
筋肉負荷トレーニングのメニューには、加齢に伴う萎縮が最も目立つ大腿四頭筋の訓練(スクワット)が欠かせません。太ももの前側にあるこの筋は、立ち上がりや歩行時の「もも上げ動作」に使われます。人間が持つ最大の筋肉です。「寝たきり老人」になる要因は第一に骨密度の低下、第二に筋力低下。この大腿四頭筋肉の衰えが大きな原因です。スクワットと言っても難しく考えないで、「椅子から立ったり座ったりの繰り返し運動」と思ってください。これなら仕事の合間にできます。
そのほか、腹筋、背筋、腕立て伏せ、ダンベル運動などが筋肉負荷トレーニングに含まれます。初心者はあまり無理をせずに、15分程度から始めましょう。運動する時間を取りにくいエグゼクティブのあなたには階段昇降を勧めます。駅やオフィスでエレベーター、エスカレーターを使わず「ももの筋肉」を使いましょう。
年間1%の筋肉の衰えを防ぐには週3回の筋トレを。週6日以上実践すればマッチョにもなれますが、そこまでやる必要ありません。運動習慣のある女性でも筋トレは忘れがち、ぜひとも取り入れてください。女性エグゼクティブこそ筋トレが必要です。いくつになってもおしゃれなハイヒールを履きたいと思いませんか? そのためには積極的ウォーキングでふくらはぎの筋肉(腓腹筋、ひらめ筋などと呼ばれてます)を鍛えましょう。バストアップやヒップラインも保ちやすくなりますよ。週3回の筋トレに加え、ウォーキング、ジョギングなど有酸素運動を週4回、ストレッチ、柔軟体操を毎日やると、大変バランスの良い運動療法になります。
筋年齢を若く保つために積極的に筋肉負荷トレーニングを行い、将来のための“貯筋”をしましょう。貯筋は早く始めるほどよく貯まります。コツコツと長きにわたって貯めるのがポイントです。すでに筋年齢が60歳になってしまった人でも、きちんと努力すれば大丈夫。決してなげやりにならないこと、決してあきらめないようにしてください。
米井嘉一(よねい よしかず)
同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンター教授
1958年東京生まれ。1986年に慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程を修了後、UCLAに留学。1989年に帰国後、日本鋼管病院内科 人間ドック脳ドック室部長を経て、2005年に同志社大学アンチエイジングリサーチセンター教授就任。現在は同志社大学生命医科学部の教授を兼任し研究に尽力するほか、日本抗加齢医学会の国際担当理事として、アジア、ヨーロッパ、アメリカなど各国の抗加齢医学会との交流に努める。主な著書に「抗加齢医学入門」(慶應義塾大学出版会)、「アンチエイジングのすすめ」(新潮社)など。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授