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» 2009年09月17日 08時30分 公開

内山悟志の「IT人材育成物語」:【第10話】注目の的 (2/2)

[内山悟志(ITR),ITmedia]
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社内で注目の取り組み

 3人が課題の構造化に取り組んでいるとき、情報システム部長の秦野は経営企画部の吉田部長とともに、川口たちがいつも勉強会の後に立ち寄る食事処にいた。秦野と吉田は同期入社で、若いころ米国支社に赴任した時も同じ部署で机を並べた仲だった。

「最近、情報システム部で若手の勉強会をやっているそうじゃないか」と焼酎のロックを勢いよく飲み干しながら、吉田はいつもの朗らかな表情で問い掛けた。吉田は、恰幅の良い体格と年齢よりもいつも若く見られる童顔の持ち主だ。

「知っていたのか。川口君を知っているだろう。彼は、なかなか教え上手のようで、楽しくやっているようだよ」と秦野は応じた。

「社内でも面白い取り組みだと評判になっているぞ。若手の育成は、どの部門でも頭の痛い問題だからな」

 川口に依頼して数週間前に始めた勉強会のことが、もう社内でうわさになっていることに秦野は驚いた。しかし、考えてみれば、人口ピラミッド問題を抱えているのは、情報システム部に限ったことではなく、あかり食品の多くの部門で同じ状況であることは確かだ。

 特に、バブル経済崩壊後の90年代後半からスリムな本社を目指す取り組みが活発化した経営企画部、経理部、人事部、広報部といった本社組織や、営業本部や生産本部の中でも営業企画部や生産技術部といった業務支援部門の多くが同様の悩みを抱えていた。

 吉田は、少し真面目な表情になって「そこで相談なのだが、川口君の勉強会にうちの部の若手も参加させてもらえないだろうか」と切り出した。

「なんだ。それで急に飯でも食おうなんて誘ったのか」。今日は吉田から相談があるからと言って誘われて、川口はここにやってきたのだった。

「まあ、そういうことだ。うちの阿部と浅賀の2人を、その勉強会に加えて欲しいのだよ。彼らなら、君の部のメンバーと同じくらいの年齢だし、同じ本社で顔も見知っているはずだ」

 やや強引な吉田の申し出に秦野は少し戸惑いながらも「おれは構わんが、川口君に聞いてみないと何とも言えないよ。間もなく、ここに3人がやってくるはずだから直接聞いてみようじゃなか」と形式通りの返事をしたものの、秦野は川口が断ることはないだろうと思っていた。


著者プロフィール

内山悟志(うちやま さとし)

株式会社アイ・ティ・アール(ITR) 代表取締役/プリンシパル・アナリスト

大手外資系企業の情報システム部門、データクエスト・ジャパン株式会社のシニア・アナリストを経て、1994年、情報技術研究所(現ITR)を設立し代表取締役に就任。ガートナーグループ・ジャパン・リサーチ・センター代表を兼務する。現在は、IT戦略、IT投資、IT組織運営などの分野を専門とするアナリストとして活動。近著は「名前だけのITコンサルなんていらない」(翔泳社)、「日本版SOX法 IT統制実践法」(SRC)、そのほか寄稿記事、講演など多数。



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