【第10話】注目の的内山悟志の「IT人材育成物語」(1/2 ページ)

第3回目の勉強会で、課題を構造化する作業に取り掛かる宮下と奥村の2人。ちょうどそのころ、情報システム部長の秦野は、経営企画部の吉田部長からある相談を持ちかけられていた。

» 2009年09月17日 08時30分 公開
[内山悟志(ITR),ITmedia]

内山悟志の「IT人材育成物語」 前回までのあらすじ



 海の日を含む7月の3連休が終わった直後の火曜日が第3回目の勉強会の日だった。川口は、前回洗い出した約50枚の付箋紙が張り詰められた模造紙と、もう1枚別の白紙の模造紙を用意していた。奥山と宮下の2人はいつものように時間通りに会議室にやってきた。

「先週説明したイシュー・ツリーとKJ法を覚えているかな。今日はこの2つを組み合わせた手法で洗い出した課題をまとめる作業をする」という川口の説明に、「どちらかの手法ではなくて、2つを組み合わせた手法ということですか」と宮下が質問した。

「そうだ。実は、イシュー・ツリーとKJ法にはそれぞれ長所と短所があるのだ。そこで、この2つのいい所取りをするために2つの手法を組み合わせることにする」

イシュー・ツリーとKJ法を組み合わせる

 川口は説明を続けた。「イシュー・ツリーは、前回も説明したようにトップダウンで因果関係をひも付けて階層構造にまとめていくわけだが、実際の課題に当てはめてみるとかなり複雑になる。ある1つの原因が複数の結果を引き起こしていたり、原因と結果がループしていたりする。階層構造という厳密な構造を意識し過ぎると、いつまで経ってもまとまらないということが頻繁に起こる。

一方、KJ法はボトムアップで小さなグループから次第に大きなグループへとまとめていくため、最終的にまとまった大きなグループ同士の関係が分かりにくかったり、課題の大きさの粒度がうまく揃わなかったりするのだ。イシュー・ツリーの良い点は、因果関係が明確で同じ階層の課題同士の粒度が比較的揃っているところだ。KJ法は、2つのグループに属しているものを許容するなど、自由度が高いところが良い点だ。そこで、上位の3レベルぐらいまでをイシュー・ツリーでまとめて、それより下位の細かな部分はKJ法でグルーピングしてしまうと合理的なのだよ」

 2人は何となく分かったような、あまり分かっていないようなはっきりしない表情で説明を聞いていた。

 そこで川口は、準備していた資料を配りイメージ図を示した(図1)。百聞は一見にしかずという言葉の通り、図を示すと宮下と奥山は「なるほど」とうなずいた。川口は、常々1枚の分かりやすい図は、1000文字の文章にも勝ると考えている。しかし、あえて始めから図を見せずにまず口頭で説明することで、2人が頭をフル回転させてその意味を咀嚼(そしゃく)し、自らの解釈で図をイメージすることを期待したのだ。文章や口頭による説明を、頭の中で図に変換することは論理力の訓練において非常に有効であるからだ。

<strong>図1</strong> イシュー・ツリーとKJ法の組み合わせ 図1 イシュー・ツリーとKJ法の組み合わせ
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