その場しのぎの対処を重ねても、組織が抱える根本的な問題を解決することはできない。タスクチームでは、問題の原因を徹底的に究明する姿勢が求められる。
「タスクチームのススメ」目次 | 項目 |
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1.タスクチームとは何か | 1-1 なぜタスクチームなのか |
1-2 タスクチーム結成のきっかけ | |
2.タスクを立ち上げる | 2-1 タスクリーダーの決定 |
2-2 解決すべき問題、タスクの目的・目標の仮定義 | |
2-3 タスクメンバーの選定 | |
2-4 スケジュールの設定 | |
2-5 ロジスティクスの設定 | |
2-6 キックオフ会議の招集と根回し | |
2-7 キックオフ会議の資料作成 | |
3.問題意識の共有と現状把握 | 3-1 キックオフ会議 |
3-2 問題意識の共有 | |
3-3 目的と目標の詳細な定義 | |
3-4 現状の把握 | |
4.問題の原因分析 | 4-1 ギャップの定義と問題の原因分析 |
4-2 原因を分析する論理的思考 | |
4-2-1 主張、データ、ロジック | |
4-2-2 因果関係 | |
4-2-3 相関関係 | |
4-3 ストーリー作り | |
5.アクションプランと進ちょく管理 | 5-1 アクションプランの定義 |
5-2 アクションプランの実行環境作りと進ちょく管理 | |
6.タスクリーダーと事務局の心得 | 6-1 リーダーと事務局の仕事は「リード」 |
6-2 会議ですべてを決めない | |
6-3 リーダーと事務局は裏方である | |
6-4 リーダーと事務局はすべてを抱え込まない | |
6-5 焦点を絞った議論と発散した議論のバランスを取る | |
6-6 意見の対立をどう考えるか | |
6-7 「貴重な人生の時間を預けてくれている」という意識を持つ | |
6-8 タスクチームの意義 | |
前回は、タスクチームが取り組む問題の課題を分析し、解決策を講じるためのシンプルなストーリーを作る考え方を取り上げた。今回は立案したストーリーをアクションプラン(行動計画)に落とし込む方法を紹介する。
具体的なアクションプランを考えるのは、問題と原因を整理し、ストーリーを構築した後だ。ここで間違いがちなのは、既に実施している項目をアクションプランとして列挙することだ。アクションプランに沿って問題の原因分析にまでさかのぼり、修正をするのはさらに始末が悪い。
既にやっていることを列挙するだけであれば、頭に汗をかかなくてもタスクのアウトプットを経営陣に見せられる形で残せる。しかし、これではタスクは成果を生み出さないし、タスクチームで立てた当初の目的も達成できない。
本連載で取り上げてきた項目に沿ってタスクチームを運営していれば、このようなことは起こらない。だが、原因特定に十分に時間をかけずにタスクの成果を出し急ごうとしてしまうことが往々にしてある。特に本業が多忙を極め、成果を出すことに焦りを感じているタスクメンバーは、「とにかく、何らかの成果をすぐに見せたい」という誘惑に駆られがちだ。
また、問題に対してその場限りの対応策を講じてしまうこともあるが、これは「対処療法」であり「問題解決」ではない。タスクチームでは常に問題解決を意識すべきである。
対処療法と問題解決の違いは何か。一例として「肩が凝っている」という症状を問題として問題を考える。肩凝りという症状に対し、「マッサージをする」「はりを打つ」といった行動を取ると、一時的に症状は軽くなる。しかし時間が経つとまた肩が凝ってしまう。これは肩凝りという根本的な問題を改善していないからで、単なる対処療法にすぎない。
本来は、肩が凝るという症状がなぜ発生しているかを分析するべきだ。例えば自分の生活習慣を見直すと、「枕が合わず、寝違えを起こしている」「かみ合わせが悪いから、首の筋が痛む」といった原因が分かるかもしれない。そうすれば、寝違えないように枕を代えたり、かみ合わせを改善するために歯医者に行ったりするという行動が取れる。肩が凝る原因を取り除くことが問題解決である。
「そんなことは当たり前だ」と一笑に付すことができるだろうか。
例えば、顧客からクレームが頻発している場合を考える。問題解決に向けてそれらに迅速に対応することは、ビジネス上最優先するべきだ。誠意を込めた対応と迅速な回答は、顧客満足度を高めることにつながり、会社内でも高い評価が得られる。だが、これらの一連の対応は対処療法であって、問題解決への取り組みとはいえない。
ここでは、クレームの内容を分析し、クレームが起こる要因を特定して、発生しないように解決を図ることが必要だ。クレームの発生要因の撲滅こそ問題解決だ。こうした取り組みは成果が出るまでに時間がかかるし、成果とそれに至るまでの努力の因果関係も見えにくい。目立たないし地道な作業だ。だが、問題分析の重要度は極めて高く、決しておろそかにしてはいけない。
ビジネスの問題が起こった場合、われわれは対処療法に走りがちだ。確かに対処療法も重要だ。だが、問題解決という視点を忘れないようにしたい。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授