営業最前線を見直せ――真の価値提供ができる営業力とは潮目を読む(3/3 ページ)

» 2009年10月08日 08時15分 公開
[椎木茂(IBCS),ITmedia]
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経済危機を打開するための創意工夫

 経済危機という状況において躍進を続けるためには、営業最前線において3つの観点での創意工夫が必要になります。それは「最適化で勝つ」、「着眼点・発想で勝つ」、「実行力で勝つ」です。顧客に非常に近い位置でスピード感のある競争を繰り広げている小売業や飲食業で成功している企業の最前線での取り組み例を基に3つの観点を述べます。

 まず「最適化で勝つ」という例です。ある飲食チェーン店では店舗ごとに異なる名物メニューがあります。理由は、最前線で売れるという判断がなされれば最速のスピードで新しいメニューの提供を実現するためです。地域性やロケーションによって顧客のニーズが異なり、競合や天候などによって日々変わっていく状況に対し、意思決定の最適化を図っており、時期を逃さず、即行動を起こすことが顧客に訴求するわけです。

 次に「着眼点・発想で勝つ」についてです。これは毎年爆発的なヒット商品を生み出している衣料品の製造小売業が傑出した例でしょう。成熟・飽和しているレディス洋品において、成人女性の4人に1人が購入するというメガヒット商品が生まれたのは、女性の1日の行動を細かく区切って、アンメット・ニーズ(気付くかれないままになっている顧客のニーズ)を徹底的に洗い出したためです。「あったらいいな」を形にするために徹底した買い手目線を貫くことは営業最前線の意識改革として最も必要なことだと考えます。

 最後は「実行力で勝つ」という例です。住まいの豊かさの追求を掲げているインテリア製販企業では、巨費を投じて毎年600人もの社員を「米国研修」に参加させています。自社のビジネスの原点でもあり、世界一競争が激しい市場を視察、調査させ、体験させることによって、勘の冴えた人、敏感で予測のできる人を育てているのです。真の実行力がある企業とは、組織の指示命令によってではなく、顧客のニーズや市場の変化に自ら気付き、意思を持って動ける人材がどれだけいるかだと言えます。営業最前線においてこのような実行力の育成・維持は生命線となるでしょう。

 真のトップダウンへのシフトという顧客企業側の潮流に対し、サービスプロバイダー側の営業モデルの在り方、トップリレーション構築の方法、最前線での創意工夫という3つの観点での見直しの必然性を述べました。次回は、営業人材に限らず、高い価値を提供するプロフェッショナル人材の育成について述べます。


著者プロフィール

椎木茂(しいのき しげる)

日本アイ・ビー・エム(日本IBM)株式会社 専務執行役員GBS事業 セクター統括担当 兼 アイ・ビー・エム ビジネスコンサルティング サービス(IBCS)株式会社 社長

1950年鹿児島生まれ。1972年に東京理科大学理学部卒業。株式会社ドッドウェル、プライスウォーターハウスコンサルタント株式会社を経て、2004年にIBCSから日本IBMに出向し、サービス事業、プロジェクト・オフィス担当。2005年1月にストラテジー&コンピテンシー、ビジネスバリュー推進担当。2006年4月、執行役員 ドリーム事業担当。2006年7月、執行役員 ドリーム事業担当 兼 IBCS代表取締役社長。2007年1月、執行役員 ビジネス・バリュー推進担当 兼 IBCS代表取締役社長。2009年7月より現職。

ビジネスプロセス革新協議会(BPIA)の常務理事も務める。



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