もっともこの暫定税率の問題で言えば、税収が極端に落ち込んできたときから、マニフェストでうたった「暫定税率の廃止」を見送らなければならないのは明らかであった。事業仕分けでも思ったほどの無駄を削減することができなかったし、予算の絞り込みと言っても、デフレという難しい状況があり、そこに円高が重なって景気が二番底をつける懸念があるときに、予算を大きく絞り込むのは難しい。
本来、デフレや景気に有効な政策へのシフトというのが最も望ましいのだが、残念ながら今の民主党政権にそれだけの絵を描く能力はないように見える。初めて政権を取って間もないせいなのか、政権のブレーンと呼ばれる人々も政権慣れしておらず現実的な政策を打ち出せないからなのか、あるいは首相が八方美人になって発言がぶれるために腰を据えた議論ができないからのか。
ましてデフレは、自民党政権下ではあるが、国のカネをいくら注ぎ込んでも克服できなかった厄介な問題。民主党がデフレを克服するために何をするのか、それもよく見えないのである。国民新党の亀井代表はしきりに金額の大きさを強調したがるように見えるが、それは自民党の轍を踏むだけではないのだろうか。そして巨額の公的借金をどう解決するのか、その道筋も示されていない。景気が悪いときに税金の引き上げという話はなかなかできないとしても、やがては消費税に手を付けざるを得ない。それを先延ばしすれば、それこそ金融市場からもノーを突きつけられる可能性だってある。
今年は明るいと政府は言いたそうだが、どうもこれまでの政策決定過程を見ていると、楽観的になる理由を見つけるのは難しい。
藤田正美(ふじた まさよし)
『ニューズウィーク日本版』元編集長。1948年東京生まれ。東京大学経済学部卒業後、『週刊東洋経済』の記者・編集者として14年間の経験を積む。85年に「よりグローバルな視点」を求めて『ニューズウィーク日本版』創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年同誌編集長。2001年〜2004年3月同誌編集主幹。インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテータとして出演。2004年4月からはフリーランスとして現在に至る。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授