自民党のていたらく藤田正美の「まるごとオブザーバー」(1/2 ページ)

批判ばかりで政策論争もない政党の価値とは何だろうか。過去の誤りを認め、これからの日本のあり方提示しない限り、国民の支持が戻ることはないだろう。役割を果たさない政党が見分けられないほど国民の目は曇っていない。

» 2010年03月05日 08時15分 公開
[藤田正美(フリージャーナリスト),ITmedia]

 いったいこの国の政治はどうなってしまったのだろう。民主党に政権を奪われた途端に自民党自体がガタガタになってしまった。民主党を批判するのに政策論議はそっちのけで「政治とカネ」の話ばかり。揚げ句の果ては、国会審議を放り出しても小沢問題や鳩山問題を追及するのだという。2月25日になってようやく審議に戻ったとはいえ、それも審議拒否をめぐって世論の風当たりが強くなったからであるように見える。

役割を果たせない自民党

 こんな戦術で7月の参議院選挙に勝てると自民党執行部が踏んでいるのなら、大変なもくろみ違いである。長崎県知事選で勝ったことで、自信を強めたのだろうか。もちろん長崎で民主党が負けたのは事実であるし、その直接あるいは間接の影響が小沢幹事長や鳩山首相の政治資金問題であったことも否定できまい。しかしこの問題が7月まで国民の関心事であるとはとうてい思えない。しかも東京地検特捜部は小沢幹事長の政治資金について、焦点のゼネコン裏献金を結局は立証できずに終わった。立証できずに終わったことで「疑惑が晴れた」わけではないが、それをいつまでも言い立てることは生産的ではない。

 それに日本の景気の状態を考えれば、いまは一刻も早く補正予算を実行に移さなければならないし、2010年度予算はいささかの遅滞も許されないほど景気の行方は微妙な状態にある。予算審議の遅れで景気を支える突っかい棒を外すなどということは、あってはならないのである。

 そして何よりも自民党には本来あるべき二大政党制の野党の姿を実現するという役割があったはずなのである。政治とは単に数だけの問題ではなく、その政治で何を実現し、社会をどのような方向に誘導するのか。それを国民に提示していく政党の姿である。

 これまでの野党は、自分たちの案にどれぐらいの実現性があるかなどと気にしないでもよかった。社民党や共産党が典型的な例である。例えば、社民党の絶対平和主義は聞いていて心地は良くても、現実離れし過ぎていると感じる。理想は理想で追い求めることは重要であると思うが、それでは目の前の問題を解決できない。普天間基地の移設問題にしても、県外、国外と唱えていればすむという話ではない。

 だからこそ本格的に下野した自民党には、現実的な野党の姿を追求してほしかったと多くの国民は思っていたはずである。それなのに自民党はその期待を裏切ってしまった(少なくとも今のところは)。政策論争と言えば、ただのばらまき批判だけ。道路などに無駄にカネをかけてきたことを反省するでもない。あとは政治とカネの問題で小沢幹事長などの証人喚問を要求するばかりだ。

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