では、このような部下を抱える上司はどうしたらいいだろうか。アドバイスは次の通りである。
(1)何のために仕事をしているのか、真剣に語り合う
(2)自信を植え付ける機会を作る
(3)中庸の大切さを知らせる
第一に、何のために仕事をしているのかについて部下と真剣に語り合うことである。1998年から2007年の間、タリーズコーヒージャパンの代表取締役社長だった松田公太氏は、アルバイトや正社員といった雇用形態を問わず、「何のために働くのか」についてとことん社員と話し合ったという。部下と真剣に向き合い、時にはしかったり、ぶつかり合うことが大切なのだ。その対話を通して部下の価値観が分かるからだ。逆に、部下が仕事をしている理由を見つけられない場合には、それを探す手伝いをしてあげると良い。なお、部下の価値観を知るには、以前のコラムで紹介した12の価値観シートが役立つ。
第二に、自信を植え付ける機会を作ることである。部下を観察し、強みを見つけ(自分で強みに気付いていない場合もあるからだ)、それを言葉にして伝えてあげる。その強みが発揮できそうな仕事を任せ、成果が出たらとことん褒めるのである。単純なことだと思うかもしれないが、部下にとっては自信がつくものである。
ただし、とってつけたような行動は禁物だ。きちんと部下を観察せずに「君はこれが得意そうだからやってみなさい」と言っても、「上司は自分のことを全然分かっていない」と思われるだけだろう。
第三に、中庸の大切さを認識させる必要がある。世の中には、短時間で白黒をつけられることの方が少ない。組織の中にはいろいろな人がいて、「これが正解」とはっきりと言えるものはない。皆で話し合いながら、最善の方法を見つけてトライし、失敗を重ね、そこから学んで次に進む。そんな姿勢が大切だということを認識させなければならない。
これらの方法を実践しても、すべての人が伸びるとは限らない。最終的に伸びるか伸びないかは本人次第であり、自分自身が変わりたいと思わなければ、変われないのである。
まずは、真剣に向き合って語り合うことから始めてほしい。部下に驚くほど大きな変化があるだろうし、上司にとっても大きな発見があるはずである。
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細川馨(ほそかわ かおる)
ビジネスコーチ株式会社代表取締役
外資系生命保険入社。支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年に当社を設立し、代表取締役に就任。コーチングを勤務先の保険会社に導入し、独自の営業システムを構築、業績を著しく伸ばす。業績を必ず伸ばす「コンサルティングコーチング」を独自のスタイルとし、現在大企業管理職への研修、企業のコーポレートコーチとして活躍。日経ビジネスアソシエ、日経ベンチャー、東商新聞連載。世界ビジネスコーチ協会資格検定委員会委員、CFP認定者、早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師。「ビジネスマンの悩み相談室」は電子書籍でも配信中。「自分は頑張っていると主張する部下に悩む上司」「ぬるい部下に悩む上司」「若い人には横から目線で共感する」(各250円)
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授