営業活動における成功の鍵低成長時代を勝ち抜く営業・調達改革(2/3 ページ)

» 2010年05月12日 16時38分 公開
[栗谷 仁(A.T. カーニー),ITmedia]

 第2の論点は「実態を捉えた営業のターゲティング」である。売り上げを増やすという営業本来の活動から見た場合の重要なポイントである。ターゲティングというと、規模が大きく、利益率が高く、成長が見込める顧客で、自社製品の特徴と顧客ニーズがフィットしている顧客セグメントをターゲットとして捉える事になる。ここで、忘れがちなのが「切り替え障壁」の存在である。切り替え障壁には大きく「物理的障壁」と「心理的障壁」が存在する。

 物理的障壁とは、切り替えることによって顧客に大きなコストが発生するような場合である。このコスト負担を解消するような方策をとらない限りなかなか切り替えに踏み切れない。例えば、情報システムを再構築するコストなどが挙げられるだろう。このような顧客に情報システムの再構築を提案する場合、初期導入における顧客側のコスト負担を低減する方策を併せて考えておく必要がある。

 難しいのは心理的障壁である。心理的に従来からの製品にこだわり、切り替えによって利点があることが分かっていても、現実には切り替えに踏み切れない場合である。例えば顧客が高齢で従来からの製品に慣れ親しんでいる場合や、職人的な感覚を左右するプロ用製品などの場合は、切り替えにユーザーが大きな抵抗感を持つ場合がある。

 このような心理的な障壁を持つセグメントは意外に多い。理論的なターゲティングだけでなく、顧客の実態を早期につかんで、成長セグメントを早めに見極めることも重要なターゲティングのポイントとなるだろう。ターゲティングとはフォーカスすべきセグメントの優先順位付けと捉えられるが、もう一歩進んで、始めに「捨てるべきセグメント」を明確化することにより、より効率的・効果的な営業活動が実践できることを忘れてはならない。

 また、ターゲティングについての最近のトレンドとして理解するべきなのが、自社製品やサービスを買ってくれる顧客企業において、調達部門の力が強まっていることである。企業にとって、現状の経済環境は厳しい。そのため、少しでも調達コストを低減するために、調達部門が積極的に介入しているのである。従来は、開発部門などユーザー部門が仕様だけでなく、調達価格に対しても決定権を持っていたが、昨今では調達部門経由での購買が多い。調達部門が価格を決定するケースが増加してきているのは事実である。

 これにより、技術的にメリットがある新製品を顧客企業のユーザー部門が求めても、従来製品よりも高ければ購入しないというケースが出てくる。調達部門の調達方針や、業務への関与の度合いを理解して顧客のターゲティングを行う事もますます重要になってきている。調達部門主導による低価格志向が過ぎるのであれば、劣後セグメントとして早期に見切りをつける必要も出てくる。

 このように、切り替え障壁の有無や調達部門のかかわりなど、顧客企業の実態やトレンドを理解した上でターゲティングすることが、効率的・効果的な営業のオペレーション活動には欠かせなくなってきているのが現状といえる。

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