営業活動における成功の鍵低成長時代を勝ち抜く営業・調達改革(1/3 ページ)

企業が持続的競争力を獲得するためには、過去の高成長時代に作られた仕組みや商習慣を見直し、継続的にオペレーションを強化することが求められる。これについて、戦略系コンサルティングファーム、A.T. カーニーの栗谷氏に営業調達の視点から話してもらう。

» 2010年05月12日 16時38分 公開
[栗谷 仁(A.T. カーニー),ITmedia]

 国内マーケットは低成長時代といわれて久しいが、そういった環境下で企業が持続的競争力を獲得するためには、革新的な技術や戦略を構築するだけではなく、過去の高成長時代に作られた仕組みや商習慣を見直し、継続的にオペレーションを強化することが求められる。今回は、大きく、オペレーションを売る側(営業)と買う側(調達)の両方の視点に立って重要な論点とその解決の考え方について論じてみたい。

 まずは、売る側として、実際に顧客と接し、売り上げに直結する役割を担う営業活動についての論点をから説明したい。また、営業活動の課題は数多くあるが、その中でも、特に重要でありながら意外と見落としている論点を3つ挙げ、その成功の鍵について考えてみる。(詳細・その他の論点については、書籍『最強の営業戦略』<東洋経済新報社>にて確認いただきたい)

 第1の論点は「企業活動の中での営業の役割」の明確化である。営業というと、売り子としていかに販売を増加させるかに目がいきがちであるが、営業は顧客と企業とのインタフェースであり、バリューチェーンにおける顧客との接点である。したがって、営業活動の中で顧客に対して行う約束事(価格・仕様・サービス水準)は企業全体のオペレーションを規定し、企業の利益水準に大きな影響を与える事をまず認識しなければならない。

 例えば、特別仕様の製品を顧客から要求されたとしよう。これはすなわち設計における部品の標準化および調達におけるボリュームディスカウントを阻害し、結果的に高コストな製品となってしまう。顧客にコストを転嫁できなければ企業としての利益が毀損することになる。時間指定などの物流手配や顧客にカスタマイズしたサービス提供なども同様だ。企業の利益改善のためには、標準化したプロセスで生み出した製品やサービスを顧客に購入してもらうのが営業には求められる。

 また、このような活動を通して、同様の品質水準でも低価格の商品を顧客提供する事が可能となり、企業と顧客が「Win-Win」の関係を築くことができるのである。 営業は企業全体を代表するエージェントである以上、顧客向けの販売活動以外の付加価値活動も求められる。例えば、生産量を決めるための需要予測や、顧客の要望などをまとめて製品開発に生かすための活動などが代表的である。このように、営業は売り上げさえ挙げればよいのではなく、企業のオペレーションの中心を担っている。企業全体のオペレーションを改善、強化するためには、営業の役割を明確化することが不可欠なのである。

(クリックで拡大)営業活動の流れと全体オペレーションを考慮した活動(出典:A.T.カーニー)
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆