あなたの人材価値は、ここで判断されている!ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術

この厳しい時代でも人材は必要とされている。実際の年収を超えた価値が提供できるか、その価値が世の中で認められているか。成功している経営者やリーダーから学ぶ人間力とは。

» 2010年05月13日 08時52分 公開
[井上和幸(経営者JP),ITmedia]

 この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


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 4月に上梓した『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』は、わたしが主にエグゼクティブサーチ業(経営層を中心とする人材紹介、いわゆる“ヘッドハンティング”)に携わる中で見てきた、“成功する経営者やリーダー”に共通する考え方、行動、習慣や癖といった「成功法則」を紹介した一冊だ。今回はその中から、「あなたの人材価値が、ヘッドハンターにどのように判断されているのか」について紹介したい。

会う前に「人物評価」の7〜8割は決まっている

 あなたが、商談やあるいは転職活動の面接などでクライアントや人材エージェントに会う際に、どのような準備をしているだろう。明日のアポイントに向けて、ネットなどで関連情報を調べ、持参する資料があればそれを作成し仕上げ、どのようなミーティングにするかについて内容を思いめぐらすかもしれない。すべては、明日のミーティングの場で、自分が最高のパフォーマンスを発揮するための“準備”だ。しかし、そこに盲点があることに気づいていない方が意外と多い。

 それは、優秀なヘッドハンターであれば、会う前のやりとりで、「その方の人物評価の7〜8割は終えている」という事実である。例えば、「それでは一度、お会いしましょう」というやりとりが、メールや電話で始まる。そのレスポンスのスピード、内容、日程調整の方法、事前準備段階での書類の受け渡しや確認事項、質問のやりとりのスムーズさ。これらを見るだけで、大枠、その人は仕事ができる人やどうかが分かってしまうのだ。

 デキるリーダーや経営者は、例外なく、これらのやりとりが非常に端的かつスピーディである。また、資料類やメールの文面が非常にきれいで分かりやすい。そして何より、やりとりを通じての対応が誠実かつ真摯である。行動というものは「あの場合はできるが、この場合はできない」ということは、まずない。時間にルーズな人は、どんな業務においても、時間にルーズである。アポイントの確認が甘い、抜け漏れが多い人は、通常業務でも確認が甘く抜け漏れが多いのだ。

 分かりやすいレジュメ(職務経歴書、履歴書)を書く人は、業務上の資料も分かりやすくシンプルで美しい。できない人の資料は不備項目が多く、分かりにくい。会うまでのやりとり一式でも、人となり、仕事力、ビジネスセンスは明らかになってしまうのだ。

 つまり、明日のミーティングの“準備”をしているあなたは、それだけで出遅れている、もしくは大きなミスを犯してしまっているかもしれない。アポイント前のやりとりから、すでに“本番”は始まっていると心得て、改めて自分の日頃のやりとりの内容、スピード、資料等のクオリティ、相手とのコミュニケーションにおける自分の対応が誠実かどうかをチェックしていただきたい。

買われる人材は、「お値打ち」か「お墨付き」かの2つだけ

 もう1つ、あなたが買われる「方程式」について、紹介したい。ヘッドハンターがあなたを買う公式は、ズバリ以下の通り。

ヘッドハンティング可能性=人物コンテンツ力×人物情報流通力

 「人物コンテンツ力」とは「その人が優れた人材である」こと。「人物情報流通力」とは「その人の存在が知られている」ことである。「人物コンテンツ力」の決め手は、わたしは次の2つしかないと考えている。それは、あなたが、(1)「お値打ち人材」か(2)「お墨付き人材」か いずれか1つ、もしくは双方を兼ね備えていることだ。

 「お値打ち人材」とは、「人材価値(期待できる仕事力、持っている人脈や営業基盤、そのほか付随して発揮してもらえそうな業務上の特技や専門性など)」と比べて、その人の「年収レベル」が低く見える人材のこと。注意して欲しいのは、絶対額としての年収が低いことではないということである。700万円の年収だが1000万円の人と同じパフォーマンスが期待できる。1000万円の年収だが1500万円クラスの職務レベルだ。2000万円だが5000万円以上の社長と比べて遜色ない。そんな“お買い得”な人材を指しているのだ。

 「お墨付き人材」とは、客観的に目に見える世界で評価されている人。ブランド人材であるということだ。業界内で価値が認められている、メディアでのポジションを確立しているという人がその頂点となるが、そこまでいかなくとも、「あなたならではの仕事力」が大なり小なりあるかどうかが、「お墨付き人材」となれるかどうかを決める。

 「人物情報流通力」とは、「知られ力」のことだが、大切なのは誰に、どのように知られるかが大事だということ。紙面の都合でこれ以上説明することはできないが、興味ある方は拙書を参照いただければ幸いだ。

 『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』の執筆に当たり、出版社からのお題は、「この厳しい時代、多くのビジネスパーソンが賃金カットなどに泣いているときに、年収を上げ続ける人とは、一体、どのような人たちなのか」を明らかにすること。「年収を上げる」ことをフックにしているが、小手先のテクニックではなく、長期的な視点で人間力のあるリーダーとなるためのきっかけと具体的なヒントを紹介した。それが中長期的に成功する秘訣だからである。

 志高きリーダー、経営者を目指す皆さまに、またそのご家族、従業員の皆さまに、可能な限り多く本書を手に取っていただけることを願っている。

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著者プロフィール:井上和幸(いのうえ・かずゆき)株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

井上和幸

株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

1966年群馬県生まれ。1989年早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人材開発部、広報室、学び事業部企画室・インターネット推進室を経て、2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。エグゼクティブコンサルタント、事業企画室長を経て、マネージングディレクターに就任。2009年9月に同社を退任退職、10月より「経営者.jp」サイトを立ち上げる。2010年2月に株式会社 経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。人材コンサルタント。著書に『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版、2010年4月20日発売)。メディア出演多数。


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