自虐的なメタファー「ガラパゴス化」を考える戦略コンサルタントの視点(2/3 ページ)

» 2010年07月06日 08時50分 公開
[くわ原 隆志(ローランド・ベルガー),ITmedia]

プレミアムの良さを分からせるということ

 確かに、多くの製品やサービスが海外に展開できていないことも事実です。しかしこのことは、逆に言えばまだまだ海外に進出する余地があるとも捉えることもできます。特に、中国をはじめとした新興国の富裕層、さらにその下のボリュームゾーンは大きなポテンシャルを持っています。

 重要なことは、この余地を攻略する際に日本市場と同じ攻め方をする必要はないということです。特に日本の標準品は新興国においても、高機能・高品質な製品やサービスであるため、プレミアムを意識していくことが1つの方法になります。

 ただしプレミアムとして展開していくには、高機能であることに加え、もう1つの評価軸を満たす必要があります。より正確に言えば、高機能にプラスアルファの価値を提供できるかがプレミアムの条件です。

 プラスアルファの価値とは、消費財やサービス業であれば、製品に有するストーリーや希少性、おもてなしの心などの「情緒的価値」に対して生じます。一方、生産財では製品機能に加え、コストダウンや売上増加や人材育成が行なわれるなどの「購買した企業の付加価値増への貢献」に対して生じます。

 これらの付加価値を提供していくためには、「仕組み」の存在が不可欠です。

売り込むための「仕組み」を作れ

 「仕組み」とは製品やサービスを単体ではなく、有機的に結びついている状況を作り出すことです。インフラやプラットフォームを売り込む、と言うこともできます。

 例えばiTunesは、音楽を整理するインフラから音楽購入機能を提供し、iPodと連携するなど、さまざまなサービスが結びついています(余談ですが、Appleの提供する仕組みへの強制的な誘導がいつまで続くかは興味深いものがあります)。

 日本の鉄道の例で言えば、運行会社と車両メーカー、インフラの提供会社は、顧客利便性や安全性を最大限に発揮できるよう、互いに設計や製造などに関与しています。海外のように個々が独立していないため、結果として、世界一正確と言っても過言ではない運行ダイヤを、付加価値として提供することが実現できているのです。

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