林田 一般的に、お店の販売員は接客するということにその役割が限定されます。しかし、本当に購買代理業をしようと思ったら、接客とマーチャンダイジングの部分の結合が非常に大切であると考えます。まさに、販売員が顧客のために商品を選んできたかのように接客できる場所として、われわれのコールセンターがあります。
センターのスタッフたちは、顧客からどういったものが欲しいかを聞き、企画担当者と一緒になって企画を作ることもあります。単なるクレーム処理をするのではなく、世の中にない新しい価値を提供するための接客です。そのためには、一般的な接客能力以上のものが求められます。次にどういう提案を顧客にするか。企画担当者と一緒に考え、商品を作り、世の中にない新しい価値を作ることをコールセンターと企画が一体となってやっているのが当社のコールセンターの特色です。
また、今お話したようなコールセンターと企画のコラボレーションの濃度は、顧客の不安とその不安に対する難易度に応じてさまざまです。大切なことは常に「不便でなく不安を解消する」コールセンターであることです。
このように、JIMOSでは、コールセンターのコミュニケーターと企画担当者が一緒になって考え、そして新しい価値を作っている。
しかし、コールセンターだけで顧客の不安を解消するのは難しいのではないだろうか。コールセンターにはさまざまな問い合わせや要望が集まるが、そのレベルはさまざまであり、必ずしも顧客が要望することがコールセンターで解決できるものばかりでないはずである。
例えば、クレジットカード決済機能がない会社に対して「クレジットカードで支払いたい。そうじゃないと不安で仕方ない」と言われたらどうするのか。
このように顧客の不安にはコールセンター含めるフロントラインが持つ機能で対応できるものとそうでないものがある。対応不能な要望とは、該当企業のケイパビリティをはるかに超えているような類のことである。こうした対応できない要望や問い合わせに対する不安や不満をフロントラインが解決するために、企業全体もしくは事業構造を担う外部企業と連携する活動を無視できない。
つまり、以下の図に示すように一般的な組織構造において、コールセンターの位置付けはフロントラインといわれる表舞台としての機能である。
表を支える裏の舞台として、調達や開発、製造機能がある。フロントラインで求められるニーズを満たすにはバックヤードにそのニーズを実現する能力(資源)があることが大前提となる。
コールセンターを含めるフロントラインのサービス品質やレベルを評価する時に、この点を意識せずに評価されることが多い。だが、実はフロントラインで提供されるサービスは、バックヤードと三位一体の活動の賜物であることを忘れてはならないのである。
その点で、JIMOSの「顧客の不安の難易度によって開発側メーカーとのコラボレーション度合いが異なる」というコメントは非常に納得できるものである。
経営者向け情報を集めた「ITmedia エグゼクティブ」の記事一覧をチェック
森 一恵(もりかずえ)
早稲田大学大学院卒。現在同大学博士課程に在籍する傍ら、早稲田大学IT戦略研究所研究員として活動。主な研究領域は、マルチチャネルを活用した商品および販売戦略、マルチチャネルサービスマーケティング。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授