「わたしは、そんなことをあなたに聞いていませんよ。わたしは、IT費用を削減する方法をお尋ねしたのです」とわたしの期待とは真逆の答えが返ってきました。わたしは少しうろたえ気味に、「いや、いまお話をした通り、会社全体のOperation Cost を・・・・・・」と言いかけると、その言葉に被せるように「わたしは、会社全体のOperation Costを削減するMission を持っていませんから、そんな説明はわたしには無用です」と。
ここまで辿り着くのに15分か20分かかったでしょうか。それ以降は、どんな話をしても全くの平行線。もちろん、こんな話もしました。「貴社におけるIT及びIT部門長であるあなたのMissionを変更してくれるように働きかけるのもあなたのMissionではないでしょうか」と、それには「Mission を変更するというMissionはわたしにはありませんから、それはできません。」とお答えになりました。なんともいえない敗北感のようなものを感じた日でした。
珍しいケースではありますが、たまにはこういう方にも出会ってしまいます。このIT部門長は「ITコストを増大させ続けさせたなら、当社はつぶれてしまいます。」ともおっしゃいました。経営者らしい言葉にも聞こえますが、さらに懐疑的になります。IT費用の増大で企業がつぶれたというケースは、わたしは聞いたことがありあせん。それよりも、ITが企業に貢献しなかったために、結果、競争力を失ったとか、ITの導入促進を認めなかったために、従業員の活性化に遅れをとってしまい、会社が元気を失ってしまった、とかはよく聞きますが。
このためには、長年かけて四角くなった「あたま」を少し丸くしてくださると良かったと思います。さて、先述の通り、ITに対する貢献の仕方は各社各様ですので正解はありません。しかし、CIO/IT部門長という役職を担う皆様には、「企業の利益に貢献せずに疲弊だけをもたらさない」ITコスト削減を検討していただきたいと考えています。
読者の中には苦笑されている方もおられるでしょう。皆さんの回りにもこういう方はいらっしゃいませんか?
2006年にガートナー ジャパン入社。それ以前は企業のシステム企画部門で情報システム戦略の企画立案、予算策定、プロジェクト・マネジメントを担当。大規模なシステム投資に端を発する業務改革プロジェクトにマネジメントの一員として参画した。ガートナーでは、CIO向けのメンバーシップ事業「エグゼクティブ・プログラム(EXP)」の日本の責任者を務める。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授