ビジネスに活用するねたみ力ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

ねたみの感情は誰にでもあるもの。封じ込めておかずに、取り出して理解することで自分の成長につなげることができる。

» 2010年08月19日 09時11分 公開
[松下信武,ITmedia]

 この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


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 2010年8月16日にソフトバンク クリエイティブから、「凡人が一流になるねたみ力」を出版した。ねたみがビジネスの現場でどのような働きをしていて、どのように活用すれば、ビジネスパーソンが成長するかについて、情動心理学の視点から書いた本である。この本は一般のビジネスパーソンを対象に書いたものであるが、それをもとにエグゼクティブの方々にねたみという素晴らしい、しかし、危険な感情をどのように利用すればよいのかについて書いてみたい。

ねたみはどのように生じるのか

『凡人が一流になる「ねたみ力」』

 Aさんは、あなたの競合会社の経営者である。年齢もほぼ同じで、起業時期も同じである。あなたの会社はあなたが新製品の開発中止を数年前に決断したために、開発費用が削減され、財務的には安定している。リーマンショック後の不況にもかかわらず、銀行借り入れも減少している。Aさんはあなたとは対照的に、新製品開発に多額の投資をして、リーマンショック直後は、会社が危機との噂が飛び交っていたが、2009年の秋に画期的な新製品の開発に成功し、形勢が逆転してしまった。性能がはるかに優れていて、価格が安いAさんの会社の製品は飛ぶように売れ、あなたの会社の主力商品のシェアが下がり、毎月の営業利益も赤字になってしまった。

 このような状況のとき、あなたがAさんにねたみを感じる可能性が高い。Aさんの会社には素晴らしい新製品があるが、あなたの会社には時代遅れの商品しかない。あなたは持っていないが、相手が素晴らしい能力やものを持っているときにねたみは生じる。相手があなたと近い関係であればあるほど、ねたむ度合いは大きくなる。もし、Aさんが外国の、あなたが全く知らない会社の経営者であれば、画期的な新製品を開発しても、あまりAさんをねたむことはないだろう。

 このケースで、あなたがAさんをねたんだとしよう。ねたみ方は人によって違ってくるが、4通り考えられる。それぞれのねたみ方によって、経営者が抱えるリスクも変わってくる。

ねたみ方によって分かる4つのタイプ

 米国は心理学研究の先進国である。ねたみの研究も多数発表されている。その中で、EQ理論の提唱者であるピーターサロヴェイ博士が中心となって出版した“ The Psychology of Jealousy and Envy”を参考にしながら、私自身の考えをまとめていった。サロヴェイたちの研究によれば、ねたみは、主として「怒り」「悲しみ」「不安」の3つの感情から成り立つとされている。ソフトバンク クリエイティブの協力で、独自にインターネット調査を実施した。その結果、日本では次の4つのタイプに分かれることが分かった。

内向不安悲しみタイプ

 あなたがこのタイプであれば、「なぜあのとき新製品開発の中止を決断したのだろうか。先見の明がないわたしは経営者失格だ」と自分を責めるとか「このまま赤字が続けば、わたしの会社は倒産してしまうだろう」と不安にさいなまれるだろう。ねたんでいる人は自分がねたんでいることに気づかず、ねたみを構成する感情を持つところが特徴の1つである。あなたが元気がなくなってしまうと、社員も社長の顔色をみて不安になり、社内のモチベーションがさらに下がってしまうリスクが生まれる。

外向比較タイプ

 「Aさんに比べたら、わたしはだめな経営者だ。社員に顔向けができない」と思ったり、「青年会議所の会議に出席しにくいな。みんなわたしのことをAさんと比べて、だめな経営者とあざ笑っているだろうな」と思うのが、このタイプの特徴である。あなたが、Aさんに差を付けられたときに不安に思うより、恰好が悪いと思う気持ちが強ければ、外向比較タイプである。あなたがこのタイプであれば、社員のモチベーションを上げるために営業決起大会を企画する、お客様に良いところを見せようと、お客様を招いて派手な商品展示会を催す、取引銀行の思惑を気にしてさらなる経費節減をする、など周囲の人の評判を良くしようという発想に引っ張られてしまうリスクがある。

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