全国各地の若い蔵元たちの経営努力もあって、東京など都市部のビジネスパーソンを中心に日本酒が元気なのは非常に良い兆しであるが、日本酒業界全体として見るならば、まだまだ予断を許さない厳しい環境下にあることは言うまでもない。
「失われた20年」の間に、日本の産業界の伝統とも言える"接待文化"はもとより、職場の"飲みニケーション文化"もすっかり衰微してしまった。それどころか、20〜30代を中心に、そもそもお酒を好まない人や、体質的に受け付けない人(=下戸)が、急増している。
「今の若手・中堅の人たちは、子供の頃に、泥酔して帰宅するバブル世代の親の姿を見ていて、そういうのをカッコ悪いと思っているんですよ。それに、食べることに執着しない人も増えている。先行き不安な中、そんなお金があったら貯金したいという人が多い。
でもそういう時代だからこそ、逆に面白いと私は思うんです。そういう若い人たちが、どうしたら、日本酒の魅力に開眼してくれるか。私たちの頭の柔らかさや、時代を読む力が試されているんだと感じます。
例えば『お酒に回すお金があったら、趣味の女装につぎ込みたい』と思っている男性(参照記事)に日本酒を飲んでもらうにはどうしたら良いか? とか。そういうことを常に考えるわけですよ(笑)」
それには、酒好きの人々の果すべき役割も大きいと思うが……?「そうなんですが、一部のうんちくオヤジやうんちくおばさんが、逆に足を引っ張っているのが気になります」と葉石さんは苦笑する。
「30〜40代の普通の女性たちを獲得しなければ、日本酒の裾野は広がりません。彼女たちには、是非、日本酒の魅力を知ってほしいし、親しんでもらいたいです。でも、今の若手や中堅の世代の人たちは、他人の価値観を押し付けられるのをとても嫌います。だから常に『遊び』の部分を残しておかなければいけない。
それなのに、うんちくオヤジやうんちくおばさんは、やれ、もろみがどうしたとか、酵母は何だとか、難しい言葉を得意気に連発して相手を煙に巻き、自分たちの日本酒観をぐいぐい押し付けようとしてきます。これでは、せっかく日本酒に親しもうと思い始めていた人たちを、どん引かせてしまいますよね。それがカッコイイと思うからそういう振る舞いをしているんでしょうが、いかがなものかと思いますよ。本当に日本酒を愛するのであれば、そんなことで目立とうとか、優位に立とうとするのはちょっと違うと思うんですよね」
読者の中には、これから本格的に日本酒に親しみたいと思っている人もいると思う。そういう人に対して、具体的なアドバイスはあるだろうか?
「良い酒屋と長く付き合うというのが1つの方法です。自分の足で、自分と相性の良い、日本酒の品揃えや保存状態の良い酒屋を見つけ、そこで買うようにするということです。難しいことではないですよ。例えば保存状態なら、日なたに平気でお酒を置いているような店はダメとか、生酒はちゃんと冷蔵してあるとか。ちょっと覗けば分かることですしね。良い酒屋は、お酒はもちろんアテについての知識も詳しいですし、各地で行われる日本酒のイベントの情報も持っています」
日本酒のイベントで、一般の人が入れるようなものとしては、どんなものがあるのだろうか?「代表的なイベントとしては、毎年6月に池袋のサンシャインシティで行われる全国公開きき酒会&日本酒フェア(参照リンク)があります。他にも年間を通じて、各蔵元の新酒の発表会が都内各所(イベント会場や居酒屋など)を中心に多数開催されますので、そういう会に参加してみるのも良いと思います」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授